シマノ「24ツインパワー」はプロの釣人でも「ステラより使いやすい」ので愛用する人がいるほど、その性能はトップレベルの機種です。
機能が豊富なだけに「何がどう変わったのか、わかりにくい」「ステラなどほかの機種と比べて具体的に何が優れているのか」という人も多いでしょう。
そこでこの記事では、「24ツインパワー」に新しく搭載された機能を紹介・解説し、そのあとによく比較される「22ステラ」や「23ストラディック」等との比較をなるべくわかりやすくしていきます。
いいところ、イマイチなところも忖度なく書きますので、「24ツインパワー」を検討されている方のお役に立つと思います。
更新情報 2024年7月
「24ヴァンフォード」発表にともない、記事を更新しました。
「24ツインパワー」に搭載された5つの新機能
前モデル「20ツインパワー」から「24ツインパワー」に進化して追加された機能は次の5つです。
- 1)インフィニティクロス
- 2)インフィニティドライブ
- 3)インフィニティループ
- 4)アンチツイストフィン
- 5)デュラクロス
横文字だらけでわかりにくいですね。順番にみていきましょう。
1)ギアの耐久性が劇的アップ「インフィニティクロス」
「インフィニティクロス」とは、新設計で耐久性がアップしたギアです。
ギアの接地面積を増やすことで、耐久性が従来品より2倍になりました。
シマノのギアはもともと耐久性が高いことで知られていますが、さらにゴロツキがでにくくなったということです。
インフィニティクロス(シマノ公式解説)
ギア歯面の設計・製造技術の進歩によりドライブギアとピニオンギアの噛み合う設地面積が向上。その結果ギアの歯面にかかる負荷をより広範囲へと分散することに成功。集中的にダメージを受けて損傷することを防ぎ、従来設計と比べて耐久性が約2倍(※)に向上しました。
※当社基準ギア耐久テストによる
出典:シマノHP
2)高負荷でも滑らかに巻ける「インフィニティドライブ」
「インフィニティドライブ」とは、高負荷時でも滑らかに巻けるシステムです。
具体的には、メインシャフトの表面処理とメインシャフトを支えるパーツの低摩擦化です。これによりスプールの上下運動を司る「メインシャフト」が高負荷時でもよりスムーズに動くようになりました。
大型魚とのファイトでも力強い対処ができます。
X-SHIPとの違いは?
スピニングリールは「ハンドルの回転運動」を、「ローターの回転運動」と「スプールの上下運動」に変換する道具です。
「X-SHIP」…「ローターの回転運動」を担当するピニオンギアを滑らかに動作させる仕組み。
「インフィニティドライブ」…「スプールの上下運動」を担当するメインシャフトを滑らかに動作させる仕組み。
インフィニティドライブ(シマノ公式解説)
これまでピニオンギアで支持していたメインシャフトを特殊低摩擦ブッシュで支持することで摺動抵抗を大幅に軽減し、さらにメインシャフト自体に特殊表面処理を施すことで回転トルクを低減。高負荷がかかった状態でも積極的に巻き上げられるリールへと進化しています。
シマノHP
3)”超”密巻きで飛距離アップ「インフィニティループ」
「インフィニティループ」は、「22ステラ」にも搭載されて話題になった“超”密巻き機能です。
ラインを密に巻くことで、キャスト時の放出抵抗が低減され飛距離のアップが期待できます。
また、着水後のフォールスピードが安定するというメリットもあります。
今回の「24ツインパワー」の目玉機能の一つです。
インフィニティループ(シマノ公式解説)
密巻きを超えた”超”密巻き。内部構造の進化により、スプールが上下動する速度を圧倒的に低速化。スプールにラインが1本1本整然と緻密に巻き付けられていくことで、ラインの放出抵抗を大幅に削減することに成功。抜けるようなキャストフィールやスムーズなラインの送り出しを実現しました。
シマノHP
飛距離アップ本当にするの?
メーカーの説明では「飛距離がアップしました!」とは明確に言い切っていません。
そこで、当サイトではユーザーのレビューを収集してみました。結果は2パターンに分かれ、1)アジング等軽いモノの飛距離テストでは差が出なかった。2)メタルジグ等重めのルアーでは10%程度の飛距離アップがあった。このように、実際に飛距離アップするかは使い方や状況にもよるようです。
4)ライントラブルを低減する「アンチツイストフィン」
「アンチツイストフィン」とは糸の脱落を抑えるパーツです。
糸が脱落すると糸が緩んだ状態でスプールに巻かれることになり、ライントラブルにつながります。釣りの時間を減らしてしまいます。
「ロングストロークスプール」や「インフィニティループ」と相性のよい、実用上とてもうれしい機能です。
隠れた名機能
しょぼいパーツに見えますが、「アンチツイストフィン」はかなり優れもののようです。密巻き機能は人によっては「ライントラブルになりやすい」と避ける人もいますが、この「アンチツイストフィン」のおかげで、かなりトラブルが低減され、むしろロングストロークではないダイワの機種より圧倒的にトラブルが少ないというプロもいるほどです。
アンチツイストフィン(シマノ公式解説)
ラインローラー部に近接するように弾性帯のフィンを設置。ラインのたるみを抑えることでスプール下部にラインが脱落する現象やラインがヨレたままスプールに巻き付けられる現象を軽減します。
シマノHP
5)なめらかなドラグ性能と高耐久の両立「デュラクロス」
「デュラクロス」とはなめらかなドラグ性能はそのままに、耐久性がアップしたドラグワッシャーです。
デュラクロス(シマノ公式解説)
デュラクロスは新材料によるドラグワッシャーを採用することで、耐摩耗性を10倍以上(※)もアップしました。ドラグの滑らかさが重視されるライトラインを使ったバスやトラウトフィッシング、ライトソルトなどから、予期せぬ大物と遭遇する可能性があるインショアやショアなどの幅広い釣りに対応します。
※当社比較テストによる
シマノHP
シマノの耐久テストでは、上記画像のように新しいドラグワッシャーの耐摩耗性が如実にアップしていることがわかります(画像は23ストラディックの例)。
ワッシャーの素材
ドラグの耐久性のアップには、「カーボン」製のワッシャーを使用するのが定石ですが、その分滑り出し性能が低下します。一方で「フェルト」製のワッシャーは滑らかな滑り出しが可能ですが、耐久性に劣ります。「デュラクロス」は「フェルト」製ながら耐久性の向上を達成したという意味で、優れています。
(補足)ボディは引き続き「半プラ」
前モデルの「20ツインパワー」では、ボディ部のリールフット側が金属でギアボックス側が樹脂(プラスチック)、いわゆる「半プラ」と言われ剛性に対する懸念から議論を呼びました。
「24ツインパワー」も前作に引き続き、負荷のかかるリールフット側は金属製(アルミニウム)であり、ギアボックス部のパーツは樹脂製のいわば「半プラ」です。
で、その剛性はいかほどか、が問題です。
以下に示されるように、「24ツインパワー」に使用されている樹脂は「CI4+」であり、通常の使用では十分なほど高い剛性があるそうです。
メーカーもそのことを意識して剛性の比較実験をしています。
左ハンドルユーザーは
左ハンドルのユーザーだとハンドルを支える側が金属製のため剛性や耐久性の不安感も少ないという意見もあります。
Amazonレビューでも剛性についてはおおむね好評のようです。
24ツインパワー(シマノ公式解説)
ツインパワーはそのCI4+とアルミニウムをボディで組み合わせることによって高剛性を実現しています。CI4+のみのボディ設計であっても通常使用での剛性は十分実現しています。
シマノHP
しかし、ツインパワーが長年追求してきたのは実釣における過剰なまでの剛性。ボディで特に負荷のかかるフットにアルミニウムを採用することで、他のリールにはない過剰なまでの剛性を備えています。
「24ツインパワー」新機能のまとめ
「24ツインパワー」の新機能をまとめると、以下の通りです。
- ギアの耐久性のアップ(インフィニティクロス)
- 高負荷の巻取りトルクのアップ(インフィニティドライブ)
- 飛距離アップ※(インフィニティループ)
- 糸絡みの低減(アンチツイストフィン)
- ドラグ耐久性のアップ(デュラクロス)
機能で言えば、「22ステラ」と同等、最新機能を余すところなく搭載しています。
ツインパワーの質実剛健さをさらに向上させるアップデートといっていいでしょう。
初期ラインナップは以下の通りです。
Amazonのレビューも参考になります。
後半では「24ツインパワー」とよく比較される「22ステラ」や「23ストラディック」等との比較をおこないます。
「24ツインパワー」よく比較される機種との比較
ここからは「24ツインパワー」をシマノの汎用スピニングリールで最高ランクの「22ステラ」から「23ストラディック」までの価格帯の機種と比較します。
リールの機能比較(材質以外)
まずは、材質以外のリールの「機能」を比較します。
前半で紹介したように、「24ツインパワー」には、「インフィニティクロス」、「インフィニティドライブ」、「インフィニティループ」、「アンチツイストフィン」、「デュラクロス」の5つの機能が搭載されました。
これにより、「24ツインパワー」の機能は「22ステラ」や「23ヴァンキッシュ」に追いつきました。
特にステラとの価格差を考えると、「24ツインパワー」はトップレベルの性能をかなりオトクに使える機種であることがわかります。
「24ツインパワー」が最上位機種「22ステラ」と明らかに違う点は、ボールベアリングとパーツの材質です。順番に見ていきましょう。
「24ツインパワー」のボールベアリングの搭載箇所
ボールベアリングが増えれば増えるほど性能アップが望めます。
どこにベアリングが追加されたのかもポイントです。
ベアリングの搭載箇所とおもな効果は、以下のようにステップアップします。
「24ツインパワー」以上の機種にはスプール内部に2個のボールベアリングを追加した「リジッドサポートドラグ」が搭載されています。これによりドラグがよりなめらかに出るようになります。
さらに、ツインパワーを含む上位機種にはラインローラーに特殊な「防水BB」が使用されていて、特に壊れやすいラインローラーのボールベアリングをケアしています。
こうしてみると、ツインパワー以上は上位機種として大きく差別化されているのがわかると思います。
ツインパワーより上位の機種は何が違う?
「21ツインパワーXD」には、ローターナット部、「23ヴァンキッシュ」にはウォームシャフトギア部に、「22ステラ」にはウォームシャフト部にそれぞれボールベアリングが1個追加されます。これらはすべて巻き心地のアップに貢献しています。具体的には、ローターナット部はローターの回転性能の向上、ウォームシャフトギア、ウォームシャフトはスプールの上下運動のなめらかさアップに寄与します。
「24ツインパワー」にマグナムライトローターは非搭載
「24ツインパワー」には「マグナムライトローター」が搭載されていません。
そのため慣性でハンドルが回りやすいため、高速に糸を巻いたり、巻きの安定性を活かす釣りで活躍します。
「コアソリッドシリーズ」と「MGLシリーズ」
シマノの汎用スピニングリールには、従来の「コアソリッドシリーズ」と、軽量・低慣性がウリの「MGLシリーズ」(クイックレスポンスシリーズ)があります。
「MGLシリーズ」には「マグナムライトローター」が搭載されています。このローターは左右非対称の形状で軽量なため、低慣性です。ルアーを繊細に操作する釣りでは、この巻き出しが軽く、ピタッと止まるローターが活躍します。
マグナムライトローター(シマノ公式解説)
回転慣性を低減化しローター剛性を強化
シマノHP
左右非対称のローター構造を採用し、操作性と感度の向上を求めて、異次元の回転の軽さを実現したマグナムライトローター。さらにラインローラーの軽量化、ベールのチタン化、ローター肉厚の最適配置を行い回転慣性の低減に成功した。
リールの材質比較
リールのパーツに使われる材質を見てみましょう。
材質の差よって強度・剛性・重量が変わります。
◆リール素材の剛性(変形しにくさ)
チタン > マグネシウム > アルミニウム > ステンレス > CI4+ > 高強度樹脂
(←軽くて高剛性)
◆リール素材の硬度(傷つきにくさ)
ステンレス >= チタン >= アルミ > マグネシウム
※素材には様々な種類があり、特に金属の合金は特性がまちまちです。リールの価格からの推測も入れています。(参考:比強度の一覧表、マグネシウムの基礎知識、「マグネシウム合金」という素材、金属材料と硬度比較)
「24ツインパワー」のボディ材質は「アルミニウム」と「CI4+」
リールの剛性感を大きく左右するパーツはボディの材質です。
前半で見たように、「24ツインパワー」のボディの素材はリールフット側が「アルミニウム」で、ギアボックス側が「CI4+」というカーボン入りの強化プラスチック素材となっています。
すべて金属製ボディであるステラには剛性は劣りますが、それでも実用上十分な剛性を確保しつつ軽量化されています。
特に左ハンドルユーザーは、ハンドルを取り付ける左側が金属製パーツのため、剛性・耐久性ともに高いです。「ステラとほぼ変わらない」という意見もあるほどです。
「24ツインパワー」のローター材質は金属!
ローターの頑丈さも大物対応には大事です。ヤワなリールだと大物を掛けたときにラインローラを支える部分「アームカム」がたわんで巻き取りに影響がでます。
「24ツインパワー」は「22ステラ」と同じ金属製のローターとなっています(C2500S以下の番手には軽量さ重視でマグネシウム、それより大きな番手にはアルミニウムが採用されています)。
シマノの汎用スピニングリールでローター素材が金属なのはステラとツインパワーだけです。
それだけツインパワーは剛性重視のセッティングになっています。
ちなみに、下図はシマノ公式HPの情報ですが、4000番のツインパワーに1Kgの負荷をかけて、ラインローラーの支持パーツ「アームカム」がどれくらい変形したかを示してます。
金属製のローターのほうが変形に圧倒的に強いことがわかると思います。
1Kgの負荷
負荷1Kgは大物とやり取りする場合にたびたび起こります。ナイロンライン0.6号で1Kgの強さですからね。
「24ツインパワー」のベール材質は「チタン」製
「24ツインパワー」には「チタン」製のベールが採用されています。
「20ツインパワー」では「ステンレス」仕様でしたから、ステラなど上位機種と同等になりました。
「ステンレス」と「チタン」の違いは、「チタン」のほうが軽く作れる点です。
これにより、ルアーの操作時にスッと巻いてピタッと止めるようなローターとベールの低慣性さが求められる釣りに使いやすくなりました。
「24ツインパワー」のスプールリング材質はステラと同じ
「スプールリング」も傷が付きやすいので工夫が凝らされる箇所です。
「24ツインパワー」では、ステラと同等のステンレス製+SWバリアコートがあらたに採用され、「スプールリング」に傷がつきにくくなっています。
こうしてみると、「24ツインパワー」は「22ステラ」に次いで剛性重視のセッティングになっていることがわかります。
「24ツインパワー」総まとめ
最後に、「コアソリッドシリーズ」の核「ステラ」「ツインパワー」「ストラディック」の関係性をまとめます(主要部のみ)。
23ストラディック
↓
ローター剛性UP+ドラグ性能UP+飛距離UP※+防水性能UP
↓
24ツインパワー
↓
ボディ剛性UP+巻き心地UP+様々な特別仕様
↓
22ステラ
「23ストラディック」は全リールの中でもトップレベルにコスパが高い機種ですが、「24ツインパワー」にアップグレードすることでさらにさまざまな機能が手に入ります。
頑丈なボディとローター、頑丈なスプールリング、なめらかなドラグ、巻心地の向上、飛距離アップ、防水性能アップなどなどです。
さらに上位の「22ステラ」にはさらにボディ剛性が高くなったり、巻き心地がアップしたり、様々な特別仕様がありますが、それだけの価格差(数万円)がありますから当然といえば当然なのかもしれません。
ただ、「24ツインパワー」は「正直、ステラとほぼ変わらない」という使用レビューもあり、そういう意味で最高峰機種の一つといえます。
コスパよく上位の機能を使いたい人は「23ストラディック」、剛性重視で機能的な妥協をしたくない人は「24ツインパワー」、とにかく最高峰が欲しい人は「22ステラ」、といった具合でしょうか。
目的や予算に応じて検討してみてください。
ショッピングサイトで購入者のレビューを見てみるのもおすすめですよ。
ライバル機のダイワ「24セルテート」の記事はこちら
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