「大物用にパワーのある大型リールがほしい」
「なるべく安価な遠投リールがほしい」
そんな方にはシマノの「25アクティブキャスト」がぴったりです。
このリールは、1万円前後で買えるにもかかわらず、実釣性能という点では上位機種と大して変わりません。
なぜそういうことが言えるのか、当サイトならではのちょっとマニアックな視点で「25アクティブキャスト」の魅力をおそらく日本一詳しく紹介します。

「25アクティブキャスト」はココが変わった
「アクティブキャスト」はエントリークラスの遠投用スピニングリールです。
そもそも遠投リールの良いところは「遠投がきくこと」「パワーがあること」です。ルアー用大型リール(SW機)と比べてもその性能は決して劣りません。

遠投リールの特長
遠投リールはスプールの径が大きく、ストロークが長いためキャスト時の糸の放出抵抗が増えにくく、遠投性能が高いです。また、ギアが大きく、ギア比が低く、ハンドルが長く力強く糸を巻き取ることができます。なお、スプールのストロークが長いために、シマノ・ダイワともにクロスギア方式のオシレーション(スプールを上下させる仕組み)となっています。
こうしたリールは、磯からのヒラマサ狙いのカゴ釣り、マダイ、コショウダイ、タマンなどの大物狙いのブッコミ釣り、青物狙いの陸からの泳がせ釣りなどに使われます。
手始めに、前モデル「10アクティブキャスト」から「25アクティブキャスト」への変化で、実に15年の歳月を経て何が新しくなったのかを見ていきましょう。
見た目のアップグレード
まずは見た目の比較です。

外観はかなりスタイリッシュになりました。
この「25アクティブキャスト」のデザインは、上位の「15スーパーエアロスピンジョイSD」にそっくりです(下図)。

この2機種はボティカラーとハンドルが違うだけに見えます。定価が倍の機種(アクティブキャストは1万円強、スピンジョイSDは2万円強)と同じボディならかなりお得に感じますね(スピンジョイには替えスプールが付属しておりその価格も大きいですが)。

15スピンジョイSDとほぼ同じ
25アクティブキャストは、外観だけでなく、ボディ素材・ローター素材・ドライブギア・ピニオンギア・ドラグワッシャーも15スピンジョイSDと同じものが使われています。
機能等の変化
機能等で変化したポイントはつぎの8つです。
- 1)AR-Cスプールの搭載
- 2)サイレントドライブの搭載
- 3)Gフリーボディの搭載
- 4)パラレルボディの搭載
- 5)ギア比がよりパワー寄りに
- 6)ドラグ力アップ
- 7)スプール径が上位機種と同等の76mmに
- 8)ボールベアリングが1個減少

重量の変化はありませんでした。
15年ぶりの更新ですからいろいろな点が変わりました。
ザッと見ていきましょう。
1)ライントラブルが減り飛距離がアップする「AR-Cスプール」
「25アクティブキャスト」に搭載された「AR-Cスプール」はスプールリングの部分が逆テーパーになったスプールです。

この形状によって、ラインのスムーズな放出と飛距離の向上を同時に実現しています。
いまやシマノのスピニングリールのほぼ全てに搭載されている定番のスプール形状ですよね。
ナイロンラインだけでなく、PEやフロロにも有効だそうです。

※「25アクティブキャスト」のドラグなしモデル(細・標準)には非搭載です。
2)微細な振動やガタつきを抑制「サイレントドライブ」
「25アクティブキャスト」に搭載された「サイレントドライブ」とは、パーツ同士のクリアランスを極力減らした設計のことです。静かでなめらかな巻き心地になります。

放置中心の釣り方では「巻き心地」はそこまで重要とはいえませんが、釣りの快適さは確実にアップします。
3)キャストが快適になる「Gフリーボディ」
「25アクティブキャスト」に搭載された「Gフリーボディ」はスプールの上下運動を担当するパーツ(摺動子ギア)をボディの近くに配置する構造のことです。

リールの重心が手元に近づき、キャスト時に竿とリールの一体感が増すために快適度が増します。
4)飛距離がアップする「パラレルボディ」
「25アクティブキャスト」に搭載された「パラレルボディ」はスプールの中心軸と竿が平行になる設計のことです。

これによって、ラインが竿を叩きにくくなり飛距離がアップします。
5)3つの基本スペックが上位モデルと同等に
メーカーの説明では省略されていますが、「25アクティブキャスト」のスペックを細かく見ていくと、次の3つの部分で上位モデルと同等になりました。
・ギア比:「3.8」から上位モデルと同じ「3.5」になりました。より力強く糸を巻くことができるようになりました。
・最大ドラグ力:「15Kg」から「20Kg」にアップしました。より大物に対応できるリールとなっています。ドラグワッシャーは「14ブルズアイ」や「15プロサーフ」などの上位モデルと共通になりました。
・スプール径:最上位の遠投リールと同じ「76mm」になりました。スプール径が大きいと特に太糸での飛距離のアップが期待できます。

個人的には、これらの基本スペックアップが嬉しいポイント!釣果は上げたいけれど出費は抑えたい人の味方になるリールです。
6)ボールベアリングが1個減った
「25アクティブキャスト」では、ラインローラー部のボールベアリングが非搭載となりボールベアリング数が1個減りました。
これは今回の変更の中で唯一のマイナスポイントです。ただし、ラインローラーのボールベアリングは追加が容易なので気になる人は追加を検討するのも良いと思います。
「25アクティブキャスト」のアップデートのまとめ
「25アクティブキャスト」の改良点を機能別にまとめましょう。
- ライントラブルの抑制(AR-Cスプール)
- キャストの快適度と飛距離のアップ(AR-Cスプール、Gフリーボディ、パラレルボディ、スプール大径化)
- 静かで滑らかな巻き心地(サイレントドライブ)
- 大型魚への対応力アップ(ギア比ダウン、ドラグ力アップ)
実釣性能で言えば、上位機種に迫るほどスペックアップしています。
上位機種の売上が減少するレベルのコスパです。
減らされたラインローラーのベアリングも、追加すれば問題ありません。
新旧アクティブキャストで迷った場合は、新しい「25アクティブキャスト」を選ぶことをおすすめします。
25アクティブキャストのラインナップ
「25アクティブキャスト」には「細」「標準」「SD1060」「SD1080」「SD1120」の5つのラインナップがあります。「細」「標準」の2機種はドラグなしの投げ専用リールで、「SD」(シングル・ドラグ)を冠する「SD1060」「SD1080」「SD1120」の3機種はその名の通りドラグ付きモデルです。
5つのラインナップは、ローターやギア類の主要パーツがすべて共通であり、パワーは同じです。ドラグの有無と糸巻き量が異なります(下表)。


品番でわかるシマノ遠投リールの糸巻き量
ちなみに、シマノの遠投リールの品番には「細」といった漢字の系統と「1120」といった数字の系統があります(下表)。数字は2桁目と3桁目で200m巻けるナイロンの号数を示しています。
品番 | 糸の種類と太さ | 糸の長さ |
---|---|---|
極細 | PE0.8号 | 200m |
細 | PE1号 | 200m |
標準 | PE2号 | ナイロン3号 | 200m |
太 | ◯050 | ナイロン5号 | 200m |
◯060 | ナイロン6号 | 200m |
極太 | ◯080 | ナイロン8号 | 200m |
◯100 | ナイロン10号 | 200m |
◯120 | ナイロン12号 | 200m |

以降は、ちょっとマニアックな説明になります。
より具体的に詳しく比較したい人むけです。
「25アクティブキャスト」と他のシマノリールを比較
「25アクティブキャスト」と他のシマノの太糸の投げ用スピニングリールを比較します。
投げ用リールでナイロン6号を200m巻くことができるのは以下の4機種です。
・「23パワーエアロTD」:ツインドラグシリーズの上位機
・「15パワーエアロプロサーフ」:ツインドラグシリーズの中級機
・「14ブルズアイ」:磯カゴ・ブッコミ用の中級機
・「25アクテティブキャスト」:磯カゴ・ブッコミ用のエントリー機(本機)
「機能」の比較(材質以外)
まずは、材質以外のリールの「機能」を比較します。

表をみてわかるように、「25アクティブキャスト」は最も廉価なモデルのため、いろいろな機能がありません。しかし、機能がないからといって「釣れない」リールとは限りません。
各機能を解説していきます。
置き竿に便利な「ツインドラグ」が非搭載
「25アクティブキャスト」には「ツインドラグ」が非搭載です。
「ツインドラグ」とはフロントドラグの大小ふたつのドラグ機能をもたせたものです。

特にブッコミ釣り系の釣りでドラグをほぼフリーにして待つような釣りで便利な機能です。内側の小さいドラグで待機時のドラグ設定を決めておき、外側の大きいドラグで瞬間的にドラグを開けたり締めたりすることができる仕様です。

ドラグ設定を瞬時に再現できる点でダイワのクイックドラグより優れます。多くの竿を使う場合には大変便利な機能です。竿2本程度であればなくても問題ありません。
ボールベアリングは主要3箇所に搭載
ボールベアリングの搭載によって、その搭載箇所の回転性能がアップします。
「25アクティブキャスト」には3個のボールベアリングが搭載されています。「ピニオンギア」と「メインギアの左右」です。これらは滑らかな巻き心地を維持するために外せないポイントです。シマノ汎用スピニングリールの「セドナ」と同じ搭載箇所です。
「14ブルズアイ」と「15パワーエアロプロサーフ」にはさらに、「ピニオンギアの下部」と「ラインローラー」に1個ずつボールベアリングが搭載されます。
「ピニオンギア」を下からもボールベアリングで支えることでローターの回転がスムーズになり、ファイト中など高負荷時に力強くハンドルを回すことができます。この構造をシマノでは「X-SHIP」といいます。
「ラインローラー」のボールベアリングは、「10アクティブキャスト」には搭載されていましたが、今回のバージョンでは省略されてしまいました。この箇所のボールベアリングは錆びやすくメーカー的には省略したい部分なのでしょう。
「23パワーエアロTD」ではさらに「ハンドルノブ」に2つのボールベアリングが追加されます。こちらも巻き心地がアップすることは言わなくてもわかりますね。

置き竿での釣りに「巻き心地」はあまりいらない
ルアー釣りに使うわけではない本機で、「巻き心地」は魚が食う・食わないにあまり影響がない部分です。実釣性能でいえば上位に搭載される「X-SHIP」や「ハンドルノブボールベアリング」は絶対に必要かといえば、そういうわけでもないでしょう。ただし、糸よれは釣果に影響しますので、「ラインローラー」のボールベアリングは追加をおすすめします。
防錆ベアリング「S A-RB」や、防水構造「Xプロテクト」が非搭載
「25アクティブキャスト」はノーマルのボールベアリングが搭載され、上位機種に搭載される錆びにくいボールベアリング「S A-RB」は非搭載です。

また、「25アクティブキャスト」には海水の侵入を防ぐ「Xプロテクト」も非搭載です。これは海水の侵入を撥水処理&ラビリンス構造によって防ぐ仕組みで、巻き感を阻害しない「非接触式構造」が特長です。今回比較する4機種の中では「23パワーエアロTD」にのみ搭載されます。


防水性能はあるに越したことはないけれど…
「25アクティブキャスト」のボールベアリングはボディ内部にあるため、堤防等の使用ではダイレクトに海水に触れることは少なく、「S A-RB」でなくても影響度は比較的低いでしょう。また、「Xプロテクト」がなくても水がぶるような状況で使わなければ別段問題なく使えます。
パワフルな巻き構造「インフィニティドライブ」がない
「25アクティブキャスト」には「インフィニティドライブ」がありません。
「インフィニティドライブ」とは、スプールを上下させる棒(メインシャフト)をより滑らかに動くようにした構造のことです。

具体的な仕組みは、次の2点です。
・「メインシャフト」を特殊低摩擦ブッシュによって支持する
・「メインシャフト」自体にも特殊な表面処理を施す

これによって、高負荷時でもより力強く巻くことができるようになります。この機能は今回比較する4機種のうち「23パワーエアロTD」にのみ搭載されます。その他の中級遠投リールには次回アップデート時に搭載されると考えられます。

大物用には助かる機能だが、なくても問題なし
ハンドルのガタツキを減らす「ねじ込み式ハンドル」が非搭載
「25アクティブキャスト」のハンドルは「ねじ込み式ハンドル」ではなく、キャップ固定式ハンドル(供回り式ハンドル)です。

この方式でも「ねじ込み式ハンドル」に比べると多少のガタツキはありますが、気軽な防波堤エサ釣りなどには十分です。
上位の機種に搭載される「ねじ込み式ハンドル」はハンドルの先が「ねじ」になっており、「キャップ固定式」と比べるとハンドルのガタツキを減らします。ルアーフィッシングなどで必要な特に低負荷時の巻きのなめらかさを実現するハンドル機構です。

画像引用元

置き竿での釣果には直結しません
キャストの安定性を上げる「リジッドキャスト」がない
「25アクティブキャスト」には「リジッドキャスト」が非搭載です。
「リジッドキャスト」とはキャスト時にリールのたわみを最小限にする設計です。
投げ用の大きく重いリールは、キャスト時にリール自体がたわんでしまうことがあり、それが飛距離とコントロールに影響を及ぼします。この新設計により、安定したキャストが可能となるのです。


飛距離は釣果に影響することがあるので、これはほしい機能です。
「材質」の比較
リールのパーツに使われる材質を比較してみましょう。
材質の差よって強度・剛性・軽量等が変わります。


ローターはボディの上に載るハンドルを回して回転する部分。
ベール(ベールアーム)は糸を誘導する針金状の部分。
スプールリングはスプールエッジを構成するパーツ。
画像出典:シマノHPから画像改変
ボディやローター材質は「高強度樹脂」
「25アクティブキャスト」のボディやローターには「高強度樹脂」が採用されています。これはシマノのリール用の素材で最低ランクの剛性の素材です。最低ランクといっても、定価が倍のスピンジョイも同じ素材なので、コスパがいいとも言えます。

弱い素材=剛性が低いリールというわけではありません。高強度樹脂でも素材を多く使うことで剛性を確保することができます。
ただ、剛性確保のために素材を多く使うとリールの重量が増します。スイングスピードが低下するので飛距離が落ちることがありますし、カゴ釣りなどの手持ちで釣る場合には大変になります。

なるべく軽いほうがいい
ドライブギアとピニオンギアの材質も最低限
「25アクティブキャスト」のドライブギアは「亜鉛ダイキャスト」です。また、ピニオンギアは「真鍮」です。それぞれシマノでは最低ランクの素材です。こちらも、最低ランクといっても、定価が倍のスピンジョイも同じ素材なので、コスパがいいとも言えます。

ドライブギアはハンドルの回転を第一に受けるメインのギアであり、負荷がかかるために頑丈さが求められます。ここに「亜鉛ダイキャスト」製の素材が使われることが気になる人は多いでしょう。シマノの得意な「超々ジェラルミン」が使われていないのです。
「亜鉛ダイキャスト」のドライブギアはシマノでは珍しく、ダイワの汎用低価格スピニングリールに多く採用されていますが、負荷のかかる釣りで長期間使用すれば多少ゴロツキ感が出て違和感が発生します。一方で「超々ジェラルミン」製のHAGANEギアはかなり頑丈で、ゴロツキ感が非常に出にくいギアです。
なお、ピニオンギアには「真鍮」が使われている理由は、コストやリール同士の差別化以外にも、噛み合うギア同士の硬度が違いすぎると不具合のもとになるということも挙げられます。

実釣性能で言えば、ギアが多少ゴロゴロなっても置き竿の釣りの釣果は落ちません。むしろ、低価格さゆえに買い替えも気軽に検討できます。
ベールは「ワンピースベール」ではない
「25アクティブキャスト」のベールはワンピースベールではなく、ツーピースベールです。
「ワンピースベール」だと継ぎ目がないので、特に柔らかいPEラインや細糸でのライントラブルの低減が期待できます。

ツーピースベールでもナイロンの太糸ならトラブルが起きることはほぼありません。
ドラグワッシャーは「デュラクロス」ではない
「25アクティブキャスト」のドラグワッシャーは通常のフェルトワッシャーです。
このフェルトワッシャー、「14ブルズアイ」や「15プロサーフ」と共通のものが採用されており、これらの上位のリールとドラグ性能はほぼ同じと考えてよいです。

「25アクティブキャスト」をフィッシングショーで触ってきましたが、ドラグのクリック感は強すぎず、滑らかさは「14ブルズアイ」と同様でよかったです。
「23パワーエアロTD」はさすが最上位なだけあって、ドラグワッシャーに「デュラクロス」が採用されています。

デュラクロスは直交するように織り込まれたフェルトワッシャーであり、ドラグの滑らかさを維持しながら、耐摩耗性が従来の10倍以上となっている高性能ワッシャーです。

とはいえ、「25アクティブキャスト」のワッシャーの価格はメーカー価格165円です。すり減ったら気軽に交換できます。超大物相手にファイト中にすり減るケースを想定するなら「デュラクロス」のほうがいいですが。
「25アクティブキャスト」総まとめ どんな人向きのリールか
まとめです。

「25アクティブキャスト」は、基本スペックが上位機種とほぼ同等であり、置き竿での使用なら「釣る」という能力においては、上位機種とほとんど変わらず、上位機種を「食う」ほどかなりコスパの高い仕様になっています。
低価格の要因はすでにある金型を使っていることと、「重量」「巻き心地」「ギア等の耐久性」を必要最低限に抑えたことです。

実釣での難点を挙げるなら、重量です。自重650gは投げ用大型リールとしては特別に重いわけではありませんが、カゴ釣りなどを手持ちでする場合や飛距離を追求したい人はさらに軽いリールも検討すべきでしょう。
したがって、「25アクティブキャスト」は置き竿で大物狙いをするような釣り方におすすめです。たとえばブリクラスの青物の置き竿での泳がせ釣りや、タマン、マダイを遠投ブッコミ釣りで狙ったりする場合に特におすすめします。
実釣性能を極力落とさない企業努力が詰まった非常にコスパの高い「25アクティブキャスト」は堤防でのほとんどの大物狙いの釣り人の強い味方となってくれるはずです。

なぜメーカーが「25アクティブキャスト」をここまでのスペックにしたか推理すると、遠投リールはあまり需要がないため、アップデートの周期が長いことが原因だと考えられます。ある程度高性能な状態でリリースしないと長年売れませんからね。発売直後に買うのが最もその恩恵を受けられます!



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