「コスパのいいエギングのリールは?」
と聞かれたら間違いなく「23セフィアSS」が候補に入るでしょう。
今回は、シマノのエギング専用スピニングリールのシリーズ「セフィア」の中級機「23セフィアSS」についてまとめました。
セフィアシリーズは、シマノのエギングに的を絞ったスピニングリールの専用ラインナップです。今回は、シリーズの中級機、「23セフィアSS」はどんな機種なのか紐解いていきたいと思います。
この記事の前半では、前モデル「19セフィアSS」から「23セフィアSS」にアップデートした際に新しく搭載された機能を紹介します。
後半では、シリーズ上位の「21セフィアXR」と下位の「22セフィアBB」との違いについてまとめます。また、「23セフィアSS」と価格的に近いシマノの汎用機「24ヴァンフォード」との比較をおこないます。
そもそもXT、XR、SS、TT、BBって何?
シマノのリールやロッドのシリーズ名末尾には「SS」などの2文字が付与されることがあります。これは製品のグレードをあわらします。ただ、なんの略なのか、詳細はシマノの公式HPでは当たりませんでした。諸々の方の意見をまとめると以下のようです。
2024年のスピニングリールではXRとSSとBBの3ランクが用いられています。今回は「23セフィアSS」なので、中級機の紹介となります。
最新更新情報 2024/7/13
「24ヴァンフォード」の発売にともない記事を修正しました
23セフィアSS の新機能は4つ!
「19セフィアSS」から「23セフィアSS」に進化した機能は4つです。
1)マイクロモジュールギアⅡ、2)Xプロテクト、3)サイレントドライブ、4)ロングストロークスプールです。
リール画像出典:シマノカスタマーセンター
ボディ材質は引き続きCI4+ながら、デザインの刷新で軽量化に成功しています。
価格は据え置きで、性能がアップグレードしていますね。
これらのアップグレートについて、サクッとみていきましょう。
1)滑らかで強い「マイクロモジュールギアⅡ」
「マイクロモジュールギアⅡ」はギアの歯を小型化することで、ギアの歯数を増やしたギア「マイクロモジュールギア」の進化版です。
画像出典:シマノHP
「マイクロモジュールギア」によって、ギアの接地面を複数で支えるためギアの強度がアップしたうえ、巻き心地のなめらかさがアップしました。
「マイクロモジュールギアⅡ」では設計が見直され、音鳴りの低減と巻き心地の滑らかさがさらにアップしました。
エギを通じて潮流の変化を感じ取る助けとなります。
マイクロモジュールギアⅡ
かろやかで滑らか。珠玉のギアフィール。
出典:シマノHP
最先鋭の歯面設計、シマノならではの製造技術によって進化したマイクロモジュールギアⅡ。ギアの歯、ひとつひとつの歯面から設計を見直し、理想的な歯形状を追求。音鳴りの低減、滑らかなギアフィーリングの向上も達成しました。
2)撥水+ラビリンス構造による防水「Xプロテクト」
シマノの防水機構の技術の一つが「Xプロテクト」です。
そもそも、「19セフィアSS」には、「コアプロテクト」という防水機構が採用されていました。コアプロテクトとは特殊撥水処理の技術とフラットな接合面によって、水を水玉化して侵入を防ごうというものです(下図)。
「Xプロテクト」では「コアプロテクト」の撥水技術に加えて水の侵入経路に「ラビリンス構造」を配置することで、さらに防水性能をアップさせています。
これらの防水技術は非接触なので、回転が重くならないメリットがあります。
Xプロテクト
シマノが誇る鉄壁の防水構造
出典:シマノHP
より軽い回転が求められる中小型汎用スピニングリールには、回転の軽さを損なわないよう非接触式構造にこだわりました。従来の撥水処理に加え、水の侵入を抑えるラビリンス構造を複合することで、非接触でありながら高い防水性能を実現しました。ストッパーベアリング部、ラインローラー部等に採用されています。
3)静かで巻き心地アップ「サイレントドライブ」
画像出典:シマノHP
「サイレントドライブ」とは、リールのボディ全体の基本設計の見直しです。これによって静かでなめらかな巻き心地を実現しています。
「マイクロモジュールギアⅡ」との相乗効果でエギを通じて水中の情報をより多く得られるようになります。
サイレントドライブ
細部まで徹底した、静謐なる一体感。
出典:シマノHP
ボディ全体の基本設計、駆動関連部品をひとつ ひとつ見直し、部品間の微細なガタ、隙間、揺れを細部に至るまで徹底的に排除。改善の対象箇所はドライブギア、ウォームシャフト、ウォームシャフトピン、ウォームシャフトギア、摺動子ギアなど多岐に渡る。あらたな次元での滑らかな回転性能、静粛性を伴った巻きごこちを実現しました。
4)飛距離がアップ「ロングストロークスプール」
画像出典:シマノHP
「ロングストロークスプール」は、その名の通り、スプールのストローク(糸巻き面の縦の長さ)を長くしたスプールです。糸の減りが遅くなるので、キャスト時のスプールエッジ等に対する放出抵抗が低減され飛距離のアップに寄与します。
エギで探れる範囲が増えますので、より直接的に釣果のアップが期待できます。
ロングストロークスプール
ロングストローク設計のスプール
出典:シマノHP
スプール糸巻き部の幅を長くすることで、キャスト後半のラインの減り量を抑えることができ、キャストフィーリングと飛距離の向上に貢献します。
「23セフィアSS」アップデート情報のまとめ
「23セフィアSS」のアップデートをまとめましょう。
- ギアの強さ、滑らかさ、静粛性のアップ(マイクロモジュールギアⅡ)
- 防水性能アップ(Xプロテクト)
- 静かで滑らかな巻き心地(サイレントドライブ)
- 飛距離アップ(ロングストロークスプール)
- 軽量化
バランスよくエギングで求められる機能をアップグレードしています。
ラインナップはC3000S、C3000SHG、C3000SDH、C3000SDHHGの4つで、エギング専用機ならではの絞った番手となっています。
「23セフィアSS」と他のシマノ製スピニングリールとの比較
今回は以下のラインナップを比較します。
・「23セフィアSS」……セフィアシリーズ中位機種
・「21セフィアXR」……セフィアシリーズ最上位機種
・「22セフィアBB」……セフィアシリーズ下位機種
・「24ヴァンフォード」…「23セフィアSS」と同価格帯の汎用機
機能比較(材質以外)
まずは、材質以外のリールの「機能」を比較します。
C3000Sと2500Sの違い
この2つの番手の違いはドラグのパワーの違いです。実用ドラグ値が低い2500Sのほうが繊細なドラグ調整が得意です。広いドラグ調整幅を急激に変化させたいラピッドファイアドラグと相性がいいのはC3000S番手です。
メーカー価格
メーカー価格からわかるように、セフィアシリーズ同士だと定価ベースで1万円ずつくらいの差があります。
インフィニティクロス、インフィニティドライブ、アンチツイストフィン、デュラクロス
同価格帯のシマノのMGLシリーズの中核機の「24ヴァンフォード」には、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、アンチツイストフィン、デュラクロスの4つの機能が搭載されています。
これらの機能をざっくりいえば以下の通りです。
- インフィニティクロス:耐久性がアップしたギアデザイン
- インフィニティドライブ:高負荷でも滑らかに巻けるシャフト構造
- アンチツイストフィン:ライントラブルを低減するフィン構造
- デュラクロス:なめらかかつ高耐久のドラグワッシャー
これらの機能はセフィアシリーズ最上位の「21セフィアXR」にも搭載されていません。ただ、エギングでこれらの機能がすべて必要かどうかは議論が分かれます。どちらかといえば耐久性や負荷をあまり気にしなくていい釣りだからです。
この中で「アンチツイストフィン」だけは頻繁にエギを操作するエギング向けの機能ですので、あったほうがいい機能です。
※「24ヴァンフォード」については、以下の記事をご参照ください。
ボールベアリング
機種ごとに、ボールベアリング(BB)の搭載数が少しずつ違います。
これが各機種の差別化に役立っています。
ベアリングの搭載箇所についてみてみましょう。
基本的にボールベアリングは多ければ性能アップが望めます。ボールベアリングでないパーツがボールベアリングに置き換わっていくためです。
まず、下位の「22セフィアBB」には5個のボールベアリングが搭載されています。これらは中級クラスのリールにはあってほしい基本の箇所です。
この基本箇所に加え、さらに中級機の「23セフィアSS」には、スプールの内部に2個のボールベアリングを追加した「リジッドサポートドラグ」が搭載されています。これによりドラグがよりなめらかに出るようになります。この価格でリジッドサポートドラグが搭載されるのは珍しいですが、確かにエギングではイカの身切れを防ぐためにハンドルノブよりドラグが優先されますから理にかなっています。
さらに、最上位の「21セフィアXR」にはハンドルノブ部に2個のボールベアリングが搭載されます。これによって主に低負荷時の巻き心地のアップが期待されます。エギングで水中の情報が少しでも欲しい場合には有利にはたらきます。
セフィアシリーズはシマノのスピニングリールの中ではやや変則的にボールベアリングが追加されます。
通常は以下のように、ハンドルノブのボールベアリングが先に実施され、スプール内部のボールベアリングの追加はそのあとのハイグレードモデルで実施されます。
そのため、汎用リールの中でスプール内部にボールベアリングが搭載されている機種は、メーカー価格5万円超のツインパワー以上となるのです。
そして、ハンドルノブへのボールベアリング追加は簡単におこなえます。「23セフィアSS」は「21セフィアXR」と同等にカスタマイズ可能です。
ラピッドファイアドラグ
シマノの「エギング専用リール」に搭載される特別なドラグが「ラピッドファイアドラグ」です。セフィアシリーズの全機種に搭載されています。これはダイワの「クイックドラグ」のようなものでドラグを急に緩めたり締めたりファイト時の調整がしやすくなっています。汎用機の2500Sが繊細なドラグ調整幅を得意とする一方、セフィアシリーズのC3000Sはドラグの調整幅も広いのでこの機能と相性もいいです。
この機能はシーバス専用リール「エクスセンス」やバス専用リール「コンプレックス」でも搭載されています。汎用機には搭載されていません。また、微妙な調整が必要になるライトゲームや管釣り用ではこの機能はありません。
ラピッドファイアドラグ
ドラグノブの回転数に対するドラグ力の変化が大きく、ストラクチャー周りで魚を止めたいとき、足元で急に突っ込まれたときなど、瞬時にドラグ調整をしたいシチュエーションで非常に有効な機能です。
出典:シマノHP
マグナムライトローター
シマノの汎用スピニングリールには、従来のコアソリッドシリーズと、軽量・低慣性がウリのMGLシリーズ(クイックレスポンスシリーズ)があります。「マグナムライトローター」はMGLシリーズに搭載されるローターです。これは、軽量かつ左右非対称の形状によって、すぐに止まる=低慣性を目的としたローターです。エギやルアーなど操作を重視する釣りでは、この巻き出しが軽く、ピタッと止まる低慣性なローターが活躍します。
マグナムライトローター
回転慣性を低減化しローター剛性を強化
出典:シマノHP
左右非対称のローター構造を採用し、操作性と感度の向上を求めて、異次元の回転の軽さを実現したマグナムライトローター。さらにラインローラーの軽量化、ベールのチタン化、ローター肉厚の最適配置を行い回転慣性の低減に成功した。
ダブルハンドルの存在
エギングではダブルハンドルを愛用する人も多く、セフィアシリーズにはダブルハンドルモデルがラインナップされています。
シングルもダブルもハンドルには互換性があるので、シングルハンドルモデルを買った後にダブルハンドルのパーツを買うなど試してみるのもいいと思います。
材質の比較
最後に、リールのパーツに使われる材質を見てみましょう。
材質の差よって強度・剛性・軽量さが変わります。
ローターはボディの上に載るハンドルを回して回転する部分。
ベール(ベールアーム)は糸を誘導する針金状の部分。
スプールリングはスプールエッジを構成するパーツ。
画像出典:シマノHPから画像改変
リールに使用される素材の重さに対する強度(比強度)や重さに対する変形のしにくさ(比剛性)は、おおよそ下記の通りだと考えられます。
チタン > マグネシウム > アルミニウム > ステンレス > CI4+ > 高強度樹脂
※素材には様々な種類があり、特に金属の合金は特性がまちまちです。リールの価格からの推測も入れています。(参考:比強度の一覧表、参考:マグネシウムの基礎知識、「マグネシウム合金」という素材)
ボディ材質
ボディの材質によってリールの重さと高負荷時の巻き取りの快適さを左右するリールの剛性が変わります。「23セフィアSS」のボディにはCI4+が採用されています。CI4+はカーボン素材が入った樹脂素材です。一般的に金属製ボディより剛性は落ちますが、エギングでは剛性より樹脂素材の軽さをとるほうがメリットがあります。実際、最上位の「21セフィアXR」でもCI4+のボディが採用されています。
ローター材質
ローターの材質もリールの剛性と重量に影響します。
「23セフィアSS」はCI4+のローターとなっています。最上位の「21セフィアXR」もローターはCI4+です。エギングではCI4+で十分だとメーカーが判断しているということです。
エギングに絞った機能と素材を選んでいます
ハンドル材質
「23セフィアSS」にはアルミ製のハンドルが採用されています。これはシマノ製スピニングリールのハンドルでは標準的な素材です。汎用機最上位のステラもアルミ製のハンドルです。なお、軽量さを狙う一部の機種ではCI4+製のハンドルが採用されています。
ハンドルノブも、指にフィットしてEVA製というエギングに最適化された形状になっています。
ベール材質
「23セフィアSS」にはチタン製のベールが採用されています。チタンは強度に優れた素材でシマノのリールでも最上位のベールとなります。
「23セフィアSS」 総まとめ
このように、「23セフィアSS」には、「CI4+」による軽量化で感度向上、「リジッドサポートドラグ」によるドラグの滑らかさで身切れを防ぎ、「マグナムライトローター」でエギの操作性アップ、などエギング上級者にも満足できる機能が満載です。
上位の「21セフィアXR」との大きな違いはハンドルノブのボールベアリングとハンドル素材くらいです。
しかも、ハンドルノブへのボールベアリング追加は簡単におこなえます。
これでほぼ「21セフィアXR」です。
汎用機「24ヴァンフォード」との違いは
「セフィアSS」のベース機は上位の「セフィアXR」と同様、「ヴァンフォード」です。
「23セフィアSS」とベース機の「20ヴァンフォード」との違い
- 23セフィアSS
= 20ヴァンフォード
+「ラピッドファイアドラグ」
+「リジッドサポートドラグ」
-「ハンドルノブBB」
「23セフィアSS」は、「ヴァンフォード」にはない「ラピッドファイアドラグ」や「リジッドサポートドラグ」などエギングで活躍するカスタムが施されたリールとなっています。その代わり、ハンドルノブのBBは差し引かれています。
次期「セフィアSS」のベース機となると考えられる「24ヴァンフォード」は注目です。新機能として、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、アンチツイストフィン、デュラクロスが搭載されています。この中で「アンチツイストフィン」はライントラブルを防ぐ意味でエギングリールにあってほしい機能です。
迷うところですが、エギングのみの専用リールが欲しい人は「23セフィアSS」、エギング以外の釣りとリールを併用したい場合は「24ヴァンフォード」が最適だと思います。
セフィアシリーズの関係図
最後に、シマノのエギング専用機セフィアシリーズの関係性をまとめます。
22セフィアBB
↓
軽量化+ドラグ性能UP+低慣性ローター+ローター剛性UP
↓
23セフィアSS
↓
ハンドルノブBB2個追加+ハンドル軽量化
↓
21セフィアXR
こうしてみると、「22セフィアBB」から「23セフィアSS」へステップアップした際に得られるメリットがかなり大きいことがわかります。一方、「23セフィアSS」から「21セフィアXR」へステップアップしても、それほどメリットが多くないこともわかります。
つまり、「23セフィアSS」はエギングにおいておすすめの上級者でも満足するであろう高コスパのエギング専用リールであるということです。
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