シマノとダイワの汎用スピニングリールで同じく「質実剛健」を謳う「24ツインパワー」と「24セルテート」。
よく比較される2機種ですが、メーカーが異なるため比較しにくいのも事実です。
ここでは、「同じような機能は同じもの」とすることで、違いを明確にし、比較を試みます。
「このケースにはこっちがおすすめ」という点がわかると思います。
とりあえずの参考まで
ダイワ「24セルテート」の優れているところ
ボディの剛性
質実剛健さを謳う上で大事なのはボディの剛性です。
シマノの「24ツインパワー」のボディは「アルミニウム」のリールフット部と「CI4+」のギアボックス部が組み合わさって構成されています(下図)。
一方でダイワの「24セルテート」は「アルミニウム」のフルメタルボディです。
加えて、ボディ剛性を高める「モノコックボディ」もあいまって、素材強度と技術特性としては「24セルテート」が一歩上回ります。
ただし、シマノHPでは、ボディが「アルミニウム」と「CI4+」の組み合わせでも「過剰なまでの剛性を備えている」と表現されています。確かに、パワーファイト時にはリールフット部分の剛性が特に大事です。ここが金属であればギアボックス側は樹脂でも問題ないということでしょう。
軽量・低慣性ローター
「24セルテート」にはザイオン製でエアドライブデザインの軽量・低慣性ローターが搭載されています。これによって巻き出し、止めが軽くなります。テクニカルな釣りをする場合に有効です。
大型番手の存在
「24セルテート」にはLT5000番が存在します。
大型番手は重量が増えますが、それだけドライブギアも大型で巻き取りのトルク力も強くなり、パワーが求められる釣りでは有効です。
それに対してシマノの「24ツインパワー」のサイズ展開は、4000番ボディまで(C5000番を含む)です。
それより大きい番手は、ルアー用大型リール(SW機)を検討する必要があります。
シマノ「24ツインパワー」の優れているところ
ローターの剛性
ローターの剛性は高負荷時の巻き心地に大きく影響します。剛性が高いと大物を対象としたファイトでもリールが歪まないので巻きやすいのです。
ダイワの「24セルテート」は高密度カーボン素材の「ZAION」製ですが、シマノの「24ツインパワー」はローターが金属製(基本的にアルミニウムでC2500などの2000番ボディ以下はマグネシウム)です。
樹脂素材より金属のほうが剛性が高いので、ここでは「24ツインパワー」の一歩リードです。
下図はシマノ公式の比較ですが、樹脂素材よりアルミニウム製ローターの剛性が相当高いことがわかります。
下図はダイワによる剛性比較です。
「ZAION」の剛性は「マグネシウム」と同等で「アルミニウム」には劣ることがわかります。
両メーカーの比較試験からも、樹脂素材より金属の優位性がわかります。
ただし、そこまでの剛性が必要か?という問題はつきまといます。大型のヒラマサ、カンパチなどの引きの強い魚を対象としなければ、その恩恵を十分に得られないかもしれません。
ダイワでは「軽さ」や「錆びにくさ」なども含めて総合的にローター素材は「ZAION」が適していると考えているのでしょう。最高峰のイグジストでもローターは「ZAION」製です。
ドラグの性能
「24ツインパワー」にはスプール部を2個のボールベアリングで支持する「リジッドサポートドラグ」が搭載されています。
一方で「24セルテート」には初期状態で同様の構造はありません(ただし、ボールベアリングの追加カスタムは可能です)。
また、「24ツインパワー」のドラグワッシャーには、「デュラクロス」という高耐久のワッシャーを使用しています。
フェルト製なので繊細なドラグの滑り出しのよさも両立しています。
他方、「24セルテート」の大型番手(LT5000番)ではカーボン素材のドラグワッシャーが採用されており、高耐久ですがやや繊細さには欠けるものになっています。
これらのことを加味すると、ボールベアリングの差で、初期状態では、ドラグ性能としては「24ツインパワー」がよさそうな印象を受けます。
ただし、「24セルテート」の小型番手ではフェルト素材のドラグワッシャーですし、ATDよりなめらかな滑り出しを可能にしたという「ATD TYPE-L」が搭載されるなど、ドラグの性能アップも図られています。ボールベアリングチューンをすれば、いい勝負になるかもしれません。
互角ともいえるところ/なんとも言えないところ
ボールベアリング
「24セルテート」では10個、「24ツインパワー」では9個のボールベアリングが搭載されています。
数でいえば「24セルテート」のほうが1個多いです。
通常、ボールベアリングが多ければそれだけ性能アップが期待できるのですが、その搭載個所をよく見ると優劣をつけがたいことがわかります。
「24セルテート」にはスプールを上下させる仕組みである「オシレーティングギア部」にボールベアリングが搭載されています。
一方、「24ツインパワー」はスプールを上下させる仕組みとして別の方式を採用しているため、これと同じ部分はありませんが、オシレーション部分にボールベアリングがないのは事実です(ちなみに「23ヴァンキッシュ」や「22ステラ」にはオシレーション部にBBがあります)。
加えて、ラインローラー部には「24セルテート」のほうが1つ多くボールベアリングが搭載されています。
これらの点で、「24セルテート」のほうが優れているといえます。
しかし、「24ツインパワー」のスプール内部には2個のボールベアリングが搭載されています(前出の「リジッドサポートドラグ」)。
この点で、「24ツインパワー」のほうが優れているといえます。
このように比べると、単純にボールベアリングの数で性能の優劣は決めがたいことがわかります。
糸の巻き方
糸の巻き方関連の比較をしましょう。これが両社で大きく違う部分です。
シマノの「24ツインパワー」は、「クロスギア式」オシュレーション+「ロングストロークスプール」+密巻き(インフィニティループ)で飛距離アップを狙う方針です。「クロスギア式」は高負荷時の巻き取りがやや軽くなるともいわれています。
対してダイワの「24セルテート」は、「カム式」オシュレーション+「大口径スプール」+クロス巻き(クロスラップ)でシンプル化・軽量化とトラブルレス性を重視しています。
各メーカーの方針が異なる点ですので、一概に比較はできません。
密巻きを必要とするかどうか、軽量さが欲しいかどうか、ユーザーの好みで優劣が決まる部分ではあると思います。
「クロスギア式」と「カム式」の違いーーオシュレーション方式
スピニングリールのスプールの上下運動を「オシュレーション」といい、「カム式」と「クロスギア式」の2通りに大別されます。
シマノでは「カム式」は安価なリール、「クロスギア式」は中高級リールに採用しています。これには、「クロスギア式」が上位機種に採用される「ロングストロークスプール」と相性がいいという理由があります。大口径スプールを特徴とするダイワでは最上位のイグジストでも「カム式」を採用しています。
防水構造
「24ツインパワー」にも「24セルテート」にもボディとボールベアリングに防水構造が搭載されています。
「24ツインパワー」は「Xプロテクト」という撥水処理+ラビリンス構造で水の侵入がされにくい方式をとっています。
完全防水ではありませんが、非接触なので巻きとりが重くならないメリットがあります。
対して「24セルテート」では磁性を持つマグオイルを用いた「マグシールド」による防水構造をとっています。
マグシールドはオイルで水をシャットアウトしますので、防水性能としては優れたものがあります。
同時に、メンテナンス性、持久性、若干の巻きの重さの点でマグシールドを嫌うユーザーがいるのも事実です。
これも方針の違いで安易に優劣をつけにくい部分です。
ドライブギア
「24セルテート」と「24ツインパワー」のドライブギアは超々ジェラルミン製(アルミニウム合金)で同じです。
ただし、特殊表面処理が施されているのは「24セルテート」です。
対して、シマノでは「22ステラ」にのみドライブギアに特殊表面処理が施されており、「24ツインパワー」には特殊表面処理は施されていません。
ここだけを見るのであれば「24セルテート」を優位とみていいとは思います。
しかし、ギアに定評があるのはシマノです。
シマノはHAGANEギア(冷間鍛造)、マイクロモジュールギアⅡ(歯面の小型化)、インフィニティクロス(耐久性向上)とさまざまなギアの改良をしてきました。
ダイワはマシンカットタフデジギア(冷間鍛造+マシンカットのギア)というギアの製法を打ち出していますが、シマノはマシンカットはギアを弱めるものとして否定する立場にあります。
世界一の自転車のギア屋のシマノのほうがギアの製造技術やノウハウとしては上とみるのが自然です。
ということで、技術自体ではシマノが上ですが、製品単体ではダイワにも勝ち目があるかどうか、といった具合でここでも安易に優劣をつけがたいのです。
まとめにかえて(個人的見解)
ここまで見るように、比較は相当難しく、実際使用状況と個人の「好み」に左右される部分も多いかと思います。
ぶっちゃけていえば、多くの場合、どっちを買ってもオーバースペック気味で比較さえしなければ十分満足してしまう、というケースも多いと思います。
それでも、どっちかよりベターな方を買いたいという方のために、最後に、あくまで個人的見解を述べます。
「24セルテート」をおすすめしたいケース
ボディ剛性を重視している人やダイワLT5000D番の糸巻量が必要な人にとっては「24セルテート」がいいでしょう。
また、同じ糸巻量でも若干、自重が軽い機種が多いのはセルテートのほうですので、少しでも軽いリールが欲しい人もダイワ「24セルテート」が候補となるでしょう。特にフィネスカスタム(FC)のある2500Sなら35gセルテートのほうが軽いです。
リールの重さ(ツインパワーとセルテート)
・シマノ2500S vs ダイワFC LT2500S で35g ダイワが軽い
・シマノC3000M vs ダイワLT3000-C で10g ダイワが軽い
・シマノ3000M vsダイワLT3000 で10g ダイワが軽い
ただ、シマノC3000以上の番手となると
同様のボディサイズかつ糸巻量の番手がないので、重さの比較はできません。
「24セルテート」はローターがZAIONというカーボン樹脂製で軽量、かつエアドライブデザインのために低慣性さもセルテートのほうが上でしょう。エギングなどのテクニカルな釣りや繊細なルアー釣りで流れの変化をより感じたい人にもおすすめです。
「24セルテート」の人気番手
(2024/7 amazon)
1位:LT4000-CXH
2位:FC LT2000S-P
3位:LT5000D-XH
4位:FC LT2500S-XH
5位:FC LT2000S-H
6位:LT3000-CH
7位:LT5000D-CXH
「24セルテート」の記事はこちら
「24ツインパワー」をおすすめしたいケース
LT5000Dの糸巻量や軽量さ、ローターの低慣性さが不要であれば、ドラグ性能、ローター剛性が高くそつがない「24ツインパワー」が魅力です。特に、セルテートと比べてローターの慣性が高いので、巻き中心の釣りにもってこいの機種です。
飛距離が出るという「超密巻き」「ロングストロークスプール」そして「クロスギア」方式の巻き感を試したい人にもツインパワーはいいです。
この手のリールを購入する方にとっては蛇足かもしれませんが、値段の点でも、ツインパワーのほうが有利です(数千円の範囲)です。「24セルテート」は仮にボールベアリングチューンをするとなるとさらにプラス2000~3000円程度かかりますし、少しでも安いほうがいい人はツインパワーがいいでしょう。
リセールがしやすくなった昨今、悩むようであればまずは両方試して片方を売るという選択肢もアリかもしれませんね。
ショッピングサイトでの購入レビューも参考になるので、ぜひ見てみてください(どっちの評価も高評価で拮抗しています)。
「24ツインパワー」の記事はこちら
コメント
セルテートと比較するならツインパワーXDの方が良い気がしますね。
その通りだと思います。
ツインパワーXDの新型が出たら比較する予定です。
コメントありがとうございました。