泳がせ釣りでは活きエサが元気であればそれだけ釣果がアップします。
活きエサを元気に保つためには、空気を送る「エアーポンプ」の性能がとても大事です。
しかし、ハイスペックを売り文句とするエアーポンプでもいざ使ってみると「思ったよりうるさい」「電池が持たなかった」「送風量が少なかった」ということが多いのも事実です。
エアーポンプは各メーカーがまちまちの方法で計測した結果を公表しているため、実際に使ってみないと真の性能はわからないという状態なのです。
なかには、実際よりもかなり「盛った」性能を表記した詐欺的製品もあります。
そこで今回は、釣り用のエアーポンプで特に人気がある5機種を購入して「静音性」「連続使用時間」「送風量」の性能を比べてみました。
ベストな釣り用エアーポンプ選びの参考にしてください。
エントリー機種
今回比較したのは以下の5つのエアーポンプです。
- 冨士灯器「FP-2000」……冨士灯器の人気機種
- Hapyson「YH-735C」……Hapysonの人気機種
- ダイソー「エアーポンプ」……格安ダイソー製
- SEAVER「SP-2000」……ネット通販で人気(乾電池式)
- SEAVER「SP-2600」……ネット通販で人気(充電式)
メーカー公表値は以下の通りです。
SEAVERって?
「SEAVER」社は聞き慣れなかったのですが、アマゾンでよく売れているので今回購入してみました。中国製ノーブランド品を日本人向けにブランディング化している会社だと思います。Amazonでは外観や性能がほぼ同じでメーカー名だけ異なる製品が複数出品されています(後述)。
検証方法
以下の2つのテストを実施しました。
・1)静音性のテスト
・2)連続使用時間&送風量のテスト
事前準備(共通事項)
・エアーポンプは水を入れた活かしバケツのポケットにセットする。
・チューブやストーンはエアーポンプに付属のものを使用する。
1)静音性のテスト方法
・エアーポンプの動作音をエアーポンプから30センチ程度の距離に設置した録音機器で録音する。
・録音データの60秒間の平均音量(dB)を調べる。
計測誤差を減らすための工夫
・使用電池による誤差を減らすために同一の電池を使用する。
・計測順による有利不利を減らすため全エアーポンプを2周計測して平均値を求める。
・録音デバイスによる差を減らすために2台の録音用端末で計測した平均値を求める。
2)連続使用時間&送風量のテスト方法
・水中で巨大な計量カップに1分間空気をためて、容器の目盛りから送風量を測定する。
・エアーポンプの動作が停止するまで5時間ごとの記録をとる。
計測誤差を減らすための工夫
・全て新品の電池を使用する(ダイソー製、同一使用期限)。
・2つの電池を用いるものは電池の減りをならすために計測ごとに位置を入れ替える。
・複数回計測し、平均値を採用する。
検証結果
泳がせ釣りのエサを確保する用途としてのおすすめ度合いをランキング形式で紹介します。
【おすすめ度 5位】SEAVER「SP-2600」
Amazonなどのショッピングサイトで、爆売れしている本機。釣り以外でも水槽用としての需要も大きく、またUSB充電タイプなので乾電池代が不要な手軽さがウケています。
◆静音性
SEAVER「SP-2600」の動作音は54dBでした。耳で聞いた印象としては、この音量ならまず周囲の迷惑になることはないでしょう。
(プレイボタンで音声が再生できます)
音声サンプル:SEAVER「SP-2600」
◆連続使用時間&送風量
・本機は10秒動作して10秒停止する「間欠モード」と常に動作する「通常モード」があります。
・「通常モード」の連続使用時間は44時間でした。メーカー公表値の25時間よりかなり長持ちしました。
・送風量はかなり少なく、満充電時でも「0.25L/分」であり、「0.14~0.11L/分」程度の送風量の期間が長かったです。メーカー公表値「1.2L/分」には程遠かったです。
公表値はアテにならない
故障でなければ、本機のメーカー公表値はかなりでたらめに決めている可能性があります。
実測値 | 公表値 |
---|---|
40時間 最大「0.25L/分」 | 25時間「1.2L/分」 |
以下は、実測性能をまとめたものです。
表の見方
・「連続使用時間」は動作が確認できた5時間刻みの時間です。
・「送風量」はその時間の平均送風量です。
上記の表だと、40時間の平均が0.13L/分だということです。
SEAVER「SP-2600」が向かないケース
本機は送風量が非常に少ないため、泳がせ釣りなどでエサを活かしたい場合など、ある程度の送風量が必要な場合にはおすすめできません。ケース周りにゴムパッキンを使用しておらず防水性にも不安があります。
※実際に、今回の検証でケース内部に水が侵入していました(分解確認済)。
SEAVER「SP-2600」はこんな人におすすめ
本機はエビやメダカ、水耕栽培といった送風量が少なくていい場合におすすめです。防水性はほぼないため、釣り用としてはおすすめできませんが、本機には停電時に自動で動作する機構がついていますので、自宅水槽のエアーポンプとして使うのがおすすめです。
【おすすめ度 4位】SEAVER「SP-2000」
こちらもAmazon等ショッピングサイトで人気のSEAVERの機種です。乾電池式です。
◆静音性
SEAVER「SP-2000」の動作音は60dBでした。かなりうるさく感じました。釣り場で気になる場合もあるでしょう。
音声サンプル:SEAVER「SP-2000」
◆連続使用時間&送風量
・連続使用時間は、46時間程度でした。メーカー公表値の60時間より短いですが、途中でガクンと送風量が低下することもなく普通に使えると思います。
・送風量は45時間の平均で「0.61L/分」でした。メーカー公表値の「2.0L/分」よりかなり少ないですが、実用性がある送風量です。
メーカー公表値は「盛っている」?
実測値 | 公表値 |
---|---|
45時間 最大「0.77L/分」 | 60時間「2.0L/分」 |
ストーン次第で送風量はアップ
エアーポンプの送風量はストーンに大きく左右されます。
本機付属のノーマルストーンは抵抗が大きく送風量は出にくいです。
やや大きめの「高耐久ストーン」だと0.1~0.15L/分程度送風量はアップします。
SEAVER「SP-2000」が向かないケース
本機は静音性が低いので、動作音が気になる人には向きません。また、本体上部にゴムパッキンがあるものの、電池ケース側にゴムパッキンがないため防水性という点では若干不安が残ります。
※計測2周目の60時間でモーターが発熱し故障しました(46時間連続計測→1週間後→14時間計測で故障)。分解確認しましたが、水の侵入形跡はなかったのでモーターの耐久性に疑問があります。
SEAVER「SP-2000」はこんな人におすすめ
本機は付属するストーンが「ノーマル」「高耐久」「BIG」の3種類あります。ノーマルセットであれば、1,600円程度で購入できますのでコスパとしては優秀です。
SEAVERのエアーポンプはレビューがなぜいいのか?
性能がいまいちなSEAVER社のエアーポンプですが、なぜかレビューは良かったりします。
これにはいくつかカラクリがあります。
1)低評価レビューをしているユーザーに返金対応をしている。
2)不具合報告をすると、代替品をすぐに送ってくれる。
3)商品にはワームなどのオマケ、手書きプリントの手紙、割引券(スクラッチカード)が同梱されている。
4)楽天で注文すると商品が「普通」の場合「★4」の評価を付けるようメールが送付され、商品の評価が底上げされている。
商品自体の性能が高いわけではなく、サービスやアフターフォローや工夫(?)で評価を上げています。
【おすすめ度 3位】ダイソー「エアーポンプ」
ダイソーの「エアーポンプ」は税抜700円という低価格やコンパクトさも魅力の機種です。
◆静音性
ダイソー「エアーポンプ」の動作音は「強モード」で46dB、「弱モード」で43dBと今回の5機種の中ではナンバーワンの静かさでした。
音声サンプル:ダイソー「エアーポンプ」強モード
音声サンプル:ダイソー「エアーポンプ」弱モード
◆連続使用時間&送風量
・連続使用時間は「強モード」「弱モード」のいずれも30時間程度でした。
・送風量は「強モード」では30時間の平均が「0.73L/分」であり乾電池1個の割に優秀でした。「弱モード」では30時間の平均が「0.29L/分」であり性能は悪かったです。
不思議な「弱モード」
普通、「弱モード」は「強モード」より送風量は劣るものの長時間動作するものなのですが、本機ではただ単に送風量が少ない不思議な結果となりました。
「弱モード」は設計不良や故障している可能性があります。
メーカー公表値は最大値?
モード | 実測値 | 公表値 |
---|---|---|
強モード | 30時間 最大「1.05L/分」 | 28時間「1.0L/分」 |
弱モード | 30時間 最大「0.59L/分」 | 40時間「0.7L/分」 |
ダイソー「エアーポンプ」が向かないケース
本機は送風量に若干の懸念があります。多くの魚を活かしたい場合などの多くの送風量が必要な場合は他の機種を検討したほうがいいでしょう。また、モーターの寿命が短いので長期間の使用には向きません。付属のストーンは泡が大きく、壊れやすく、性能は低いです。
ダイソー「エアーポンプ」はこんな人におすすめ
本機は、静音性を求めるかたに特におすすめです。また、コンパクトなボディに単一乾電池1個で動作すること、電池ケースに防水パッキンがあり、非常に安価(税込み770円)で購入できることなどを踏まえると、エアーポンプを持っていない人が最初の1台として買うにはいいと思います。
ダイソー「エアーポンプ」について詳細はこちらの記事をどうぞ
【おすすめ度 2位】Hapyson 「YH-735C」
本機は、釣り用2大エアーポンプメーカーの一つHapyson(ハピソン)のスタンダードモデルです。なお、今回比べた5機種の中でこれだけ新品ではなく、7年間の使用品です。
Hapyson(ハピソン)とは
Hapysonはパナソニックから釣具事業を継承した日本の会社です。
電気ウキ、集魚灯、エアーポンプ、ヘッドライトなど電池系釣具が得意です。
◆静音性
「強モード」は58dBとややうるさく、「弱モード」は54dBで静かです。個人的には、釣り場で気になったことはありません。
音声サンプル:Hapyson「YH-735C」強モード
音声サンプル:Hapyson「YH-735C」弱モード
◆連続使用時間&送風量
・「強モード」で30時間の平均送風量は「1.22L/分」でした。多くのエサを活かしたい場合に最適です。
・「弱モード」だと、110時間の平均送風量は「0.48L/分」でした。今回の検証中で、最も高い電池効率であり、長時間多くの送風が可能でした。
メーカー公表値は平均値
モード | 実測値 | 公表値 |
---|---|---|
強モード | 25時間 平均「1.28L/分」 | 25時間「1.3L/分」 |
弱モード | 75時間 平均「0.57L/分」 | 75時間「0.6L/分」 |
今回唯一の「平均値」ベースの公表値でした。良心的!
Hapyson「YH-735C」が向かないケース
本機は最安でも4,000円程度、店売りで5,000円以上しますので、格安でエアーポンプが欲しい人には向きません。電池ケースにゴムパッキンがあるなど、防水性には配慮されていますが、電池ボックス内部に錆がでることがあります。
Hapyson「YH-735C」はこんな人におすすめ
釣行回数が多い人など、電池を少しでも効率よく使いたい人には本機がおすすめです。釣行ごとに2つの電池の位置を入れ替えるのが長持ちのコツです。送風量が大きく変化しないので、使いやすい点も良いですね。さらに、筆者が7年間やや雑に使って現役なので、長期使用の信頼性もあります。
おすすめ度「2位」の理由
エアーポンプの基本性能では「1位」と「2位」の差はほぼないですが、防水性能のレビューがよく、ストーン等の細かい工夫の差で多くの人におすすめしやすい機種を「1位」としました。
【おすすめ度 1位】冨士灯器「FP-2000」
冨士灯器のスタンダードモデル。本格的な釣り用エアーポンプで一番人気の機種だと思います。
冨士灯器とは
冨士灯器は創業100年を超える日本の釣具メーカーです。
Hapyson同様、電気ウキ、ヘッドライト、エアーポンプなどの電池系釣具に特化しています。
◆静音性
冨士灯器「FP-2000」の「強モード」は62dBで今回の機種中、最もうるさかったです。「弱モード」は55dBでそこそこ静かです。
音声サンプル:冨士灯器「FP-2000」強モード
音声サンプル:冨士灯器「FP-2000」弱モード
◆連続使用時間&送風量
・「強モード」では約25時間で停止しました。送風量は25時間の平均が「1.24L/分」でした。短時間ながら今回最もパワフルな送風量となりました。
・「弱モード」では約74時間稼働しました。送風量は70時間で平均「0.64L/分」でした。
メーカー公表値は最大値?
モード | 実測値 | 公表値 |
---|---|---|
強モード | 25時間 最大「1.8L/分」 | 18時間「2.0L/分」 |
弱モード | 74時間 最大「0.92L/分」 | 65時間「0.9L/分」 |
冨士灯器「FP-2000」が向かないケース
本機は最安でも4,600円程度、店売りだと8,000円以上することもあり、格安のエアーポンプが欲しい人には向きません。パワー重視の製品なので、電池の持ちはHapyson「YH735-C」より劣ります。特に「強モード」では、20時間経過すると送風量がガクンと落ちるので、注意が必要です。また、「強モード」の動作音はかなり大きいので、動作音が気になる人には注意が必要です。
冨士灯器「FP-2000」はこんな人におすすめ
本機は「強モード」と「弱モード」のいずれも送風量の多さがポイントで、多くのエサを元気に保つことができます。内部構造はHapyson「YH-735C」とほぼ同じでが、「YH-735C」より防水性の公表性能が高く(IPX6相当)、また防水性のレビューも良いため、多くの人におすすめできます。
超ハイパワーなモデルもある
さらに送風量が欲しい人は単一乾電池を4個!使用するさらにパワフルな「FP-3000」もあります。送風量だけみれば現状最強機種の1つです。
※購入の際には本体サイズに注意してください。
まとめ
今回の計測結果を、まとめて見てみましょう。
送風量の推移グラフです。
冨士灯器「FP-2000」とHapyson「YH-735C」はさすがメーカー品、非常に優秀でした。いずれも「強モード」でのパワフルな送風量、「弱モード」での連続使用時間が目を引きます。
ダイソーの「エアーポンプ」の「強モード」は乾電池1個で動作することを考えれば悪くない性能です(ストーンはイマイチですが)。
今回の計測結果をまとめた表です。
泳がせ釣り目的では、以下の目的に合わせて選ぶと良いと思います。
・「静音性」や「価格」を重視したい……ダイソー「エアーポンプ」
・「連続使用時間」を重視したい……Hapyson「YH735-C」
・「送風量」や「防水性」を重視したい……冨士灯器「FP-2000」
エアーポンプはケチらないほうがいい
泳がせ釣りは必要な道具が多く、安いもので揃えたくなりますがエアーポンプはケチらないことをおすすめします。送風量が少ないと肝心の活エサが弱ってしまい、思うように釣果が伸びないからです。安物は壊れやすく性能も低いので「安物買いの銭失い」にならないようよく吟味してみてください。
※あくまでも付属ストーンの結果
今回の実験は付属ストーンでの結果です。
ストーンの違いで送風量は変化します。
ご要望次第で追加検証したいと思います。
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