今回は、シマノのスピニングリール「21エクスセンス」についてまとめます。
シマノのエクスセンスシリーズは、シーバスのルアーフィッシングに求められる性能が詰め込まれたスピニングリールのラインナップです。
シリーズの最上位機種となる「エクスセンス」はどんな機種なのでしょうか。
画像出典:シマノHP
この記事の前半では、「17エクスセンス」から「21エクスセンス」へのアップデートで新しく搭載された機能を紹介します。
後半では、同じエクスセンスシリーズの中級機種の「23エクスセンスXR」と入門機種の「24エクスセンスBB」および、21エクスセンスとよく比較されるシマノの機種(ヴァンキッシュ、ツインパワー、ツインパワーXD、ステラ)との比較をおこないます。
21エクスセンス には 3つの機能が新搭載
「17エクスセンス」から「21エクスセンス」に進化して追加された機能は3つです。
1)マイクロモジュールギアⅡ、2)サイレントドライブ、3)ロングストロークスプールです。
リール画像出典:シマノカスタマーセンター
マイクロモジュールギアは、マイクロモジュールギアⅡにアップグレードされ、ボディ材質は引き続きマグネシウムです。
17エクスセンスではボディパーツすべてがマグネシウムの「フルメタルボディ」でしたが、21エクスセンスではギアボックス側がCI4+に変更になっています。これにより剛性はある程度担保しながら軽量化に成功しています。
価格は少し上がりましたが、性能がアップグレードしています。
これらのアップグレートについて、サクッとみていきましょう。
1)滑らかで強い「マイクロモジュールギアⅡ」
画像出典:シマノHP
「マイクロモジュールギアⅡ」はギアの歯を小型化することで、ギアの歯数を増やしたギア「マイクロモジュールギア」の進化版です。
画像出典:シマノHP
マイクロモジュールギアによって、ギアの接地面を複数で支えるためギアの強度がアップしたうえ、巻き心地のなめらかさがアップしました。「Ⅱ」では設計が見直され、音鳴りの低減と巻き心地の滑らかさがさらにアップしました。
ルアーの水のつかみ具合や潮流の変化を感じ取るとる助けとなります。
「ギアのシマノ」の本領発揮ですね。
マイクロモジュールギアⅡ
かろやかで滑らか。珠玉のギアフィール。
出典:シマノHP
最先鋭の歯面設計、シマノならではの製造技術によって進化したマイクロモジュールギアⅡ。ギアの歯、ひとつひとつの歯面から設計を見直し、理想的な歯形状を追求。音鳴りの低減、滑らかなギアフィーリングの向上も達成しました。
2)静かで巻き心地アップ「サイレントドライブ」
画像出典:シマノHP
「サイレントドライブ」とは、リールのボディ全体の基本設計の見直しです。これによって静かでなめらかな巻き心地を実現しています。
マイクロモジュールギアⅡとの相乗効果でルアーフィッシングで重要な水中の情報をより多く得られるようになります。
サイレントドライブ
細部まで徹底した、静謐なる一体感。
シマノHP
ボディ全体の基本設計、駆動関連部品をひとつ ひとつ見直し、部品間の微細なガタ、隙間、揺れを細部に至るまで徹底的に排除。改善の対象箇所はドライブギア、ウォームシャフト、ウォームシャフトピン、ウォームシャフトギア、摺動子ギアなど多岐に渡る。あらたな次元での滑らかな回転性能、静粛性を伴った巻きごこちを実現しました。
3)飛距離がアップ「ロングストロークスプール」
画像出典:シマノHP
「ロングストロークスプール」は、その名の通り、スプールのストローク(糸巻き面の縦の長さ)を長くしたスプールです。糸の減りが遅くなるので、キャスト時のスプールエッジ等に対する放出抵抗が低減され飛距離のアップに寄与します。
ルアーで探れる範囲が増えますので、より直接的に釣果のアップが期待できます。
ロングストロークスプール
ロングストローク設計のスプール
シマノHP
スプール糸巻き部の幅を長くすることで、キャスト後半のラインの減り量を抑えることができ、キャストフィーリングと飛距離の向上に貢献します。
21エクスセンス アップデートのまとめ
21エクスセンスのアップデートをまとめましょう。
- ギアの音鳴りの低減、静粛性のアップ(マイクロモジュールギア→マイクロモジュールギアⅡ)
- 静かで滑らかな巻き心地(サイレントドライブ)
- 飛距離アップ(ロングストロークスプール)
- 軽量化(ボディフタ素材にCI4+を採用など)
シーバスフィッシングで求められる機能をアップデートしています。
ラインナップはC3000M、C3000MHG、3000MHG、4000MXGの4つで、シーバスフィッシング専用機ならではの絞った番手となっています。
21エクスセンス と他のシマノ製スピニングリールとの比較
シマノのシーバス専用スピニングリールのシリーズがエクスセンスです。
今回は、「21エクスセンス」とほかのエクスセンスシリーズ「23エクスセンスXR」「24エクスセンスBB」を比較します。さらに、21エクスセンスと同じくらいの価格帯の汎用スピニングリールでよく比較される「23ヴァンキッシュ」「24ツインパワー」「21ツインパワーXD」ついでに価格も性能も最高峰の「22ステラ」もあわせて比較します。
機能比較(材質以外)
まずは、材質以外のリールの「機能」を比較します。
メーカー価格
メーカー価格からわかるように、エクスセンスシリーズの最上位は「エクスセンス」です。中級機種が「エクスセンスXR」で入門モデルが「エクスセンスBB」です。定価ベースで2万円ずつくらいの差があります。
インフィニティクロス、インフィニティドライブ、インフィニティループ、アンチツイストフィン、デュラクロス
シマノの汎用リールには、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、インフィニティループ、アンチツイストフィン、デュラクロスといった5つの機能が搭載されつつあります。
これらの機能をざっくりいえば以下の通りです。
- インフィニティクロス:耐久性がアップしたギアデザイン
- インフィニティドライブ:高負荷でも滑らかに巻けるシャフト構造
- インフィニティループ:超密巻きで飛距離アップ
- アンチツイストフィン:ライントラブルを低減するフィン構造
- デュラクロス:なめらかかつ高耐久のドラグワッシャー
これらの機能は19ヴァンキッシュのシーバス版とされる「21エクスセンス」には搭載されていません。
ボールベアリング
機種ごとに、ボールベアリング(BB)の搭載数が少しずつ違います。
これが各機種の差別化に役立っています。
ベアリングの搭載箇所は、以下のようにステップアップします。
基本的にボールベアリングは多ければ性能アップが望めます。ボールベアリングでないパーツがボールベアリングに置き換わっていき、その追加順もほぼ一律です(セフィアSS等を除く)。
どこにベアリングが搭載されているかがポイントです。
まず、24エクスセンスBBには5個ボールベアリングが搭載されています。これらは中級クラスのリールにはあってほしい基本の箇所です。
内訳は以下の通りです。
- 「メインギアの左右」:低価格リールにも必須級の搭載箇所です。
- 「ピニオンギアの上下」:シマノでは「Xシップ」と呼ばれる構造の一部で、高負荷の巻きの滑らかさに直結します。
- 「ラインローラー」:おもにライントラブルを低減させます。
23エクスセンスXRや24ツインパワーには「ハンドルノブ」に2個ボールベアリングが追加されます。これにより、主に低負荷時巻きのなめらかさがアップします。ルアーフィッシングで水中の情報が少しでも欲しい釣りにはあってほしいアップデートです。
それだけではありません。スプール内部にボールベアリングを2個追加した「リジッドサポートドラグ」が搭載されています。これによりドラグがよりなめらかに出るようになります。
さらに、ツインパワーXDではローターナット部に1個、21エクスセンスや23ヴァンキッシュにはウォームシャフトギア部に1個のボールベアリングが搭載されます。最高峰のステラには、さらにウォームシャフト部に1個ボールベアリングが搭載されます。これらは巻き心地のアップに貢献しています。
なお、21エクスセンスにはラインローラーに特殊な防水BBが使用されていて、特に壊れやすいラインローラーのボールベアリングをケアしています。汎用機でもツインパワー以上の上位の機種では採用されています。
ラピッドファイアドラグ
シマノの「シーバス専用リール」に搭載される特別なドラグが「ラピッドファイアドラグ」です。エクスセンスシリーズの全機種に搭載されています。これはダイワの「クイックドラグ」のようなものでドラグを急に緩めたり締めたりしやすくなっています。
ラピッドファイアドラグ
ドラグノブの回転数に対するドラグ力の変化が大きく、ストラクチャー周りで魚を止めたいとき、足元で急に突っ込まれたときなど、瞬時にドラグ調整をしたいシチュエーションで非常に有効な機能です。
シマノHP
マグナムライトローター
シマノの汎用スピニングリールには、従来のコアソリッドシリーズと、軽量・低慣性がウリのMGLシリーズ(クイックレスポンスシリーズ)があります。マグナムライトローターはMGLシリーズ(クイックレスポンスシリーズ)に搭載される低慣性ローターです。これは、左右非対称の形状によって、すぐに止まる=低慣性を目的ととしています。ルアーを繊細に操作する釣りでは、この巻き出しが軽く、ピタッと止まる低慣性なローターが活躍します。
マグナムライトローター
回転慣性を低減化しローター剛性を強化
シマノHP
左右非対称のローター構造を採用し、操作性と感度の向上を求めて、異次元の回転の軽さを実現したマグナムライトローター。さらにラインローラーの軽量化、ベールのチタン化、ローター肉厚の最適配置を行い回転慣性の低減に成功した。
材質の比較
最後に、リールのパーツに使われる材質を見てみましょう。
材質の差よって強度・剛性・軽量さが変わります。
画像出典:シマノHPから画像改変
リールに使用される素材の重さに対する強度(比強度)や重さに対する変形のしにくさ(比剛性)は、おおよそ下記の通りだと考えられます。
(参考:比強度の一覧表、参考:マグネシウムの基礎知識、「マグネシウム合金」という素材)
チタン > マグネシウム > アルミニウム > ステンレス > CI4+ > 高強度樹脂
※素材には様々な種類があり、特に金属の合金は特性がまちまちです。リールの価格からの推測も入れています。
ボディ材質
ボディの材質がボディ剛性を左右します。21エクスセンスのボディのうち、リールフット側はマグネシウムで、ギアボックス側はCI4+です。
前モデルの17エクスセンスだとギアボックス側もマグネシウムのフルメタルボディでした。
剛性面ではマイナスですが、シーバスフィッシングという用途では、リールの剛性より軽量さのほうが必要とされますので、プラスの進化だと思います。
ローター材質
ローターの材質がヤワだと、大物を掛けたときにラインローラを支える部分がたわんで巻き取りに影響がでます。
21エクスセンスXRのローターの素材はCI4+です。剛性より軽量さを重視するシーバスフィッシングには最適な選択ではないでしょうか。
ベール材質
23エクスセンスXRにはチタン製のベールが採用されています。チタンは強度に優れた素材でシマノのリールでも最上位のベールとなります。
スプールリング材質
スプールリングも傷が付きやすいので工夫が凝らされる箇所です。21エクスセンスには、アルミスプールにスプールリングは高耐久硬質コートになっています。こちらは23ヴァンキッシュと同じ仕様です。軽量さに寄せた場合の最高峰のセッティングです。
21エクスセンス 総まとめ
21エクスセンスでは、ボディにマグネシウムを用いて剛性をアップさせているとことが大きなポイントです。
加えてローターやスプールも軽量なセッティングになっており、軽量さにもこだわった仕様になっています。さらに、リジッドサポートドラグによるドラグの滑らかさ、ハンドルノブに2ボールベアリング搭載、ローターナット部やウォームシャフトギア部にボールベアリングが搭載されるなど、汎用リールの最上級ステラに近いセットアップになっています。
21エクスセンスと派生元の19バンキッシュとの違いはおもに「ラピッドファイアドラグ」です。
- 21エクスセンス = 19ヴァンキッシュ+「ラピッドファイアドラグ」
21エクスセンスを買うことの意義は、最高峰のシーバス専用リールが欲しくて「ラピッドファイアドラグ」を使いたい人向けです。
もし、ラピッドファイアドラグが不要なら、「23ヴァンキッシュ」をおすすめします。23ヴァンキッシュは同価格帯ながら、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、インフィニティループ、アンチツイストフィン、デュラクロスといった汎用スピニングリールの最新機能が搭載されているためです。
最後に、「ラピッドファイアドラグ」搭載のシーバス専用機エクスセンスシリーズの関係性をまとめます。
24エクスセンスBB
↓
ローター剛性UP+ドラグ性能UP+低慣性ローター
↓
23エクスセンスXR
↓
ボディ剛性UP+巻き心地UP+防水ラインローラーBB+高耐久スプールリング
↓
21エクスセンス
目的や予算に応じて検討してみてください。
コメント