糸の安全基準とドラグ設定

釣り科学

ブリ狙いで使われるナイロン糸の太さの目安は以下の式で計算できます。

ナイロン(号数)= ブリの全長(cm)/10 

10センチあたり1号です。

100センチ(11.5キロ前後)のブリなら10号(直線強力16kg)のナイロン糸を使用するのが標準的です。

なぜそうなるのか?を今回は探求します。

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ちょっと計算してみよう

「魚の重さに対する引っ張る力は1.7~1.8倍」という話があります。

これをもとに計算してみましょう。

11.5kgのブリを釣るなら21kgの負荷にどう対処するのか?という問題になります。

ナイロン10号をまっすぐ引っ張ったときの強度(直線強力)は16kg程度しかありません。ダイレクトに21kgの負荷がかかると切れてしまいます。

更に悪いニュースがいくつかあります。

  • 糸は結ぶと弱くなります(直線強力>結節強力)。
  • ナイロンラインは水に入れると給水し、光によって劣化します。
  • ガイド等の摩擦で切れることも考慮する必要があります。

日本の糸はこうした「悪いニュース」を度外視した直線強力の最大値で表示されていることが多いです(ポンドクラスライン)。

対して、アメリカ等海外の糸はこれらの「悪いニュース」を加味して、ある程度の安全率を想定して計算し保証値(ポンドテストライン)になっているものが多いです。糸は最も弱いところで切れますので、こちらのほうが実際に即した値になります。

ナイロンラインの場合、最大強力を10とするとこれらの要素(結束・劣化)を加味した最小強力は6~7程度になるようです(テストラインの保証値)。

したがって、10号16kgクラスのナイロン糸は、その六割五分とすると実際は10.4kgしか耐えられないということになります。

どうすれば、実強力10.4kgで21kgの魚の引きに対処できるのでしょう?

魚の引きはドラグで対処する

2倍もあるギャップを埋めるのが、竿のしなり、リールのドラグなどの釣具の役割です。

特にドラグを適切な設定にすることで、瞬発的な引き・摩擦などの負荷に有効に対処することができます。

リールからダイレクトに糸を引いた場合、糸にはドラグ値の2倍の瞬発的な負荷がかかります。(シーバスのプロアングラー村岡正憲さん)

この場合、10.4kgの実強力の糸を最大限活かすためにはドラグ値を5.2kgに設定すればよいということです。

これはリールからダイレクトに糸を引っ張った状況の話ですが、実際に多用されるドラグ設定値です。引きがあまり強くない魚の場合、竿のしなり分でガイドへの摩擦の影響を打ち消すことができるのです。

引きの強い魚が対象の場合、ガイド等への摩擦を考慮して25%程度弱いドラグ値を設定し、安全マージンをとることになります。

これはつまり、ドラグの設定値はその糸の最大強度(クラス値)の1/4~1/3程度のドラグ値に設定するということです。(最大強度の65%×1/2=1/3、1/3×4/3=1/4)

たとえば、

・ナイロン6号(22lb 10kgクラス)ならドラグ値はその1/4~1/3で2.5㎏~3.3kgです。

・ナイロン8号(28lb 13㎏クラス)ならドラグ値は1/4~1/3で3.3㎏~4.3㎏となります。

・ナイロン10号(35lb 16㎏クラス)ならドラグ値は1/4~1/3で4㎏~5.3㎏となります。

ブリの場合、よく走るのでドラグは1/4設定が推奨されます。ナイロン6号の場合は2.5kg、8号の場合は3.3kg、10号の場合は4kgを基準にドラグを設定します。

このような適切なドラグ設定さえすれば、なかなか糸は切れません。ナイロン6号でもメーター近いブリをあげることができます。ただ、魚の引きが強いと、竿がのされて糸の負荷が増えてラインブレイクを起こしたり、糸がすべて出されるとドラグは使えなくなってやはりラインブレイクします。ですので、対象魚が大きい場合は、糸を太くして強いドラグ設定で早く寄せる必要があるのです。

リールのドラグ力の見方

リールには「最大ドラグ力」が記載されていることが多いですが、あれは、ドラグを最大限まで締めたときの「参考値」です。親切なメーカーの表では、「実用ドラグ力」を示してくれています。これが調整可能な実際の最大ドラグ力です。

最大ドラグ力と実用ドラグ力
最大ドラグ力と実用ドラグ力の違い

■最大ドラグ力の定義…測定基準:基準ラインを規定量巻き、ドラグを最大限手で締めた状態でラインを引く。この時にドラグが滑り始めた時点のテンションを最大ドラグ力と呼びます。
■実用ドラグ力の定義…測定基準:基準ラインを規定量巻き、ドラグを手で締めた状態でラインを引く。この時に実使用状態で調整が容易にできる範囲での最大張力を実用ドラグ力と呼びます。(シマノ公式)

実際に使用するドラグ力が「実用ドラグ力以下」に収まっていれば、リールとしては対応可能ということです。

なお、下図はシマノの2025年現行スピニングリールのうちドラグ値が公表されている機種の最大ドラグ値と実用ドラグ値の関係を示した散布図です。

シマノのスピニングリールの実用ドラグ力と最大ドラグ力の関係
青点は汎用機、オレンジ点はSW機、黒点は遠投機

図を見てわかるように、大雑把に言えば、汎用機は実用ドラグ力の1.8倍が最大ドラグ力、SW機は実用ドラグ力の1.5倍が最大ドラグ力であると捉えることができます。カーボンワッシャーだろうが、フェルトワッシャーだろうが大して比率に違いがないのが面白いところです。

補足
補足

糸に合わせて竿とリールを選ぶ
釣り道具は竿とリールから選びがちですが、本来は糸から選びます。ナイロン6~8号を効果的に使うために、竿は磯竿4号~5号(適合ナイロン糸の平均値が6号~8号)、リールは実用ドラグ値6kg前後(最大ドラグ値12kg前後)が標準的です。リールの場合、ドラグ力は強ければよいわけではなく、SW機のようにあまり強すぎても滑り出しが滑らかでなくなり、調整が難しくなります。ただし遠投リールの場合、スプール径が大きくフェルトドラグを使うケースも多く、最大ドラグ力が大きくても滑らかに滑り出すリールもあります。

泳がせ・ノマセ釣りの道具の全般については以下の記事を参考にしてください。

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