タチウオのウキ釣りのポイント、1回目の前篇は「シーズン・時間、場所、タックル」について、2回目の中篇では「仕掛け」に関するポイントをまとめました。最終回の後篇では、エサや誘い、アワセについてポイントをまとめます。
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【エサ】 その時食べているエサが最強
タチウオに限らず、フィッシュイーターの魚を釣るときにはマッチ・ザ・ベイト(実際食べているエサに合わせてエサを選択すること)を意識します。
カタクチイワシやキビナゴが釣り場で釣れたらそのエサがベストです。その釣り場でタチウオが食べているものに合わせるのです。活餌のまま使うとタチウオさえいれば、すぐにアタリがあるはずです。、死んでいても他のエサよりアタリが多いです。
関西の波止では、たいていカタクチイワシがベストのエサです。タチウオの指3本~4本クラスだと、細長い体のためにカタクチイワシくらいが捕食しやすく具合がいいのだと思います。
引用元:Wikipedia「カタクチイワシ」撮影者 Kingfisher
大阪でとれたタチウオの食性についての調査結果ですが、カタクチイワシをよく食べていることがわかっています。
九州などではこれがキビナゴになったりします。
全国的に、タチウオのウキ釣りのエサといえば、キビナゴとサンマでしょう。カタクチイワシは腹が腐りやすいので、保存性がよくないのもあると思います。カタクチイワシが釣れないときは、シルエットがにているキビナゴをファーストチョイスとするのがいいでしょう。
ただし、小魚のシルエットのエサが絶対というわけではありません。実際、サンマの切り身のほうがよく釣れる場合も多くあります。臭いが強く、エサ持ちがいいので、連発するのであればサンマのほうが具合がいいのです。サンマの切り身は、身が大きめのほうがアタリはありますが、掛かりが落ちます。ですので、掛かりが悪ければ細長く小さく切ります。船のテンビン釣りでは、サバかコノシロエサが定番です。コノシロはかなりエサ持ちがいいため、知る人ぞ知るエサです。コノシロなら幅1センチ、長さ10センチ程度にします。
市販のエサで無難なのはキビナゴですが、できればキビナゴとサンマの二種を持参してローテーションすることをおすすめします。アタリが止まったら交換、を繰り返します。
サンマやキビナゴはエサ屋・釣具屋の冷凍ものを買うより、スーパーの人間用のものを使って、新鮮ならそのままでもOKですし、塩などでかるく締めて持参するのが定番です。
【エサの添加剤について】アミノリキッド、いわし油、紫外線加工液などがあります。それぞれ使ってきましたが、集魚的な意味があるかどうかはよくわかりません。この中で、軽締めアミノリキッド(マルキュー)はほどよくエサが締まるうえに、エサのキラキラが残るので便利で愛用しています。
【集魚灯】 効果はあるが、周囲のことも考える
条例で禁止されている釣り場では使えませんが、集魚灯は効果があります。タチウオには走光性があり、また小魚も光に集まるプランクトンを食べに集まってきます。
集魚灯は、明るいうちから点灯するのが定石です。ただし、使用には注意が必要です。発電機を使って強力な集魚ライトを使うと集魚しすぎて、それ以外の人が釣れなくなってしまうことがあります。人がいるときは気をつけてください。
基本的に白熱電球タイプのほうがLEDタイプより圧倒的にいいです。自分がLED水中集魚灯を使っていても、地上から白熱電球を使う釣り人のほうばかり釣れるのはよくあることです。理由は光の成分の違いでしょう。地上実験ですが、以下のアイリスオーヤマの実験では、白熱電球のほうが圧倒的に虫が寄りやすかった(LED / 10匹 白熱電球 / 90匹)です。白熱球のほうが紫外線の放出量が圧倒的に多く、それを感知できる虫があつまったためです。プランクトンも同様に紫外線を感知できるのだと思います。
出典:アイリスオーヤマ「LEDに虫が寄り付きにくい」のはホント?徹底検証
LEDタイプも無いよりはましで、最近では、乾電池式で気軽に使えるものも出ています。
LED水中集魚灯の選び方はこちらの記事をご覧ください。
【タナ】 活性が高いときは上タナを意識
タチウオは、活性が高いと上ずってくる魚です。周りが連発していて自分だけ釣れないという場合、たいてい2ヒロより下を釣っている場合が多いです。そんなときは表層~1ヒロまでを中心に探るようにします。
水族館でのタチウオの捕食映像を見ると、自分より上の落ちてくるエサによく反応していました。思ったよりも上を意識するといいみたいです。
連発しないときは、だんだんとウキ下を長く、狙いタナを下げていくのです。
管理人が初心者で短いシーバスロッドを使っていたとき、他の人より連発したことがありました。理由がわからなかったのですが、単に竿の長さのせいで浅いタナを探っていたから、ということに後で気づきました。
大阪湾奥の場合、タナを深めにとるのは、シーズン終盤の12月末くらいです。
貝塚人工島などの潮通しのいい場所での釣りでは、夏季にタナを深めにとる場合もあります。
いずれも水温の関係で表層が釣れない場合です。
【距離】 岸から何メートル沖を攻めるか
遠投しても釣れず、足元にぽちゃんと放置した仕掛けに食ってきたりします。タチウオが岸から何メートル沖を回遊しやすいかを把握することも大事です。釣れている人を観察してその距離にあわせるようにします。
遠投距離を気にしたのは、タチウオに電池式の水中ライトを切られて持っていかれたことがきっかけです。そのライトは明るく、タチウオの口に引っかかったライトが遠くからでもわかりました。しばらくみていると、反時計回りに100mほど沖に行って岸沿いに200メートルほど泳いで、また100mほど岸に近づいて、岸沿いを平行に泳ぎ、を繰り返していることがわかりました。同じコースを何遍も回遊しています。岸沿いに泳ぐときには、竿下くらいのところまで来ていることが一目瞭然でした。闇雲に遠投してもタチウオの回遊コースに入らないことを理解しました。
ハプニング以外で回遊コースを知るのは難しいですが、意外と竿下も試してみる価値はあるのです。
【誘い】 エサはふわふわ落とすのが基本
基本的に、エサは放置せず、マメに動かすようにします。
動きに反応する場合のタチウオの反応パターンは基本的に2通りです。横に引かれるときの動きと落ちるときの動きです。1)少し仕掛けを引く、2)フォールさせる、を繰り返すと効率的にアタリを引き出すことができます。
基本的にはこの動きでOKですが、より釣果を増やすには、アタリが出る動き、速度、タナを探るのが大事です。
横の動きに反応するとき
回収する速度でただ引きしているときにやたら食いついてくるほど高活性なこともあります。回収時にアタリが頻発するときは、動かし気味にするほうがいいですし、タナをやや浅めにします。場合によってはウキを外したほうが釣果が伸びるでしょう。
フォールに反応するとき
活性が高いときは、ゆっくり落とすより少し早めに落とすほうが反応がいいです。オモリは数種類持っていき落下(フォール)速度を変えるようにします。フォールの反応がいい場合は、ウキを外す方が効率が高くなることもあります。
横の動きの変化として、たまに、3)サッとリアクション的に素早く動かすのは、有効です。逃走するものについ食いついてしまうのはルアーフィッシングをする人なら「そうそう」とうなずいてくれるでしょう。ウキ釣りの場合、ワインドのように激しく動かすと針からエサが取れる場合がありますので、軽いトゥイッチやサーッと棒引きを入れるだけでOKです。
タチウオ釣りでは、独特のジグヘッドワームをワンピッチで泳がせるワインド釣法が有名です。左右にダートするアクションを出して釣るのですが、まさにキビナゴの泳ぎに似ています。
誘わないほうがいいケースもあります。いわゆる4)待ち、放置です。待ち方にもコツがあって、特にシーズンのはじめと終わりの活性が低い場合は、竿やウキの動きがダイレクトに伝わるように糸を張り、最低限エサが動くようにして待ちます。
図では竿を手に持っていますが、こんなときは置き竿をいくつか用意するのも手です(他の釣り人のじゃまにならない範囲で)。
【アワセ】 アワセのコツは、結構人による
タチウオ釣りのアワセでさまざまな人がさまざまなコツをいいます。人それぞれで絶対的な基準はないということです。自分のタックル・仕掛けやそのときにあったパターンを探すようにします。
アワセのタイミングはだいたい3パターンです。
アタリがあってから、1)→2)→3)と大抵進行します。
1)タチウオがエサの腹付近を目指して噛み、ガツガツ・ゴンゴンと首を振って仕留めます。その後、2)グーンとタチウオが走り、水と一緒にエサを飲み込みます。何回も走ることがあります。3)タチウオがエサを飲み込むとテンションをかけてもエサを放す素振りがなく一定の重さが伝わってきます。
チヌ針1本の仕掛けなら、個人的には3)「タチウオの重さが乗ってから」を推します。針が多い仕掛けを選択しているとき(活性も高い)は、1)や2)でも掛かります。
たいてい待ち時間は長ければ長いほど掛かりはいいのですが、連発する場合は効率が落ちますし、エサを吐かれる可能性が出てきます。
アタリがあっても2)がなかなか起きない場合、アタリがあってから、軽く糸を張って2)を誘発します。糸が張られると、タチウオも早く飲み込むべく走って飲み込もうとするようです。
達人となると、1)「ガツガツ・ゴンゴン」のタイミングで口の指定箇所に掛けることができるようですが、私のような素人は飲ませて喉に掛けるのが精一杯です。
繰り返しになりますが、どのアワセがいいのかは、その日の活性とタチウオのサイズ、仕掛け、タックルバランスとの関係もあります。活性が高くすぐ飲み込むときやタチウオのサイズが大きいとき、複数本の仕掛けを使う場合は早アワセでいいですし、その逆に渋い日で小型ばかり、シングルフックの仕掛けだと慎重にアワセるほかありません。
個人的にフッキング率アップには、タイミングより、針数を増やす、エサを飲ませる時間を増やす(エサ持ちをよくする)、吐かれないようにシンプルな仕掛けにする、エサのサイズを小さめにする(あたりは減るが掛かりはよくなる)、竿を強くする、強くアワセるという方法をとることが多いです。
(補足) 捕食の一例
アワセにお悩みの方は、海遊館で撮影されたタチウオの捕食シーンが勉強になると思います。タチウオが水族館で展示されるのはめずらしく、私もこのとき海遊館へいって観察しましたが、餌やりの時間ではなく、捕食シーンは見られませんでした。映像になっているはたいへん助かります。
この映像をもとに、タチウオの捕食の一例を図示します。
落ちているエサによく反応しているのがわかります。
エサの胴体をめがけて飛びつきます。蛇のように体をくねらせ、瞬発力で一瞬で仕留めます。
何度も噛みながら、エサを絶命させ、
飲み込むために、エサを回転させながらくわえ直していきます。
エサが2つに分離した場合は、尻尾側を飲み込むことも多いです。(くわえ直す必要がない)
映像にはありませんでしたが、このあと、飲み込むために走ると思われます。
釣り糸がついてテンションがかっていると飲み込めないので、何度も走ることもあります。
釣れたタチウオの胃袋から出てくる小魚の頭の向きをみると、たいてい頭から飲み込んでいることから、タチウオが小魚の頭から食べることをかなり意識していることは事実でしょう。逆から飲んでしまうと、鱗の方向が邪魔して飲み込みにくいのでしょう。
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