スピニングリール、種類が多くてどれを選んでよいのか迷いませんか?
メーカーはコストを抑えた製品作りをするために、機種間で多くの共通部分をもたせています。
たとえば、
・ボディやローターのデザインが共通
・パーツの素材が共通
というケースがはほぼすべてのリールで存在し、ギア類は全く同一のパーツが使われることも珍しくありません。
こうした「共通性」に着目することで、どんなコンセプトのリールなのかが大変わかりやすくなります。
今回は共通性をもとにした各リールの相関図(ポジショニングマップ)を作成しました。
グレードや機種ごとの特徴も簡単にまとめましたので、リール選びの参考にしていただければ幸いです。

今回は、シマノの汎用スピニングリール2025年現行機種のみです。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは「3つのシリーズ」と「5つのグレード」を基礎として作成しました。
3つのシリーズ
シマノ汎用スピニングリールには以下の3つのシリーズに区分できます。
- コアソリッドシリーズ
- MGLシリーズ
- 低価格シリーズ
・「コアソリッドシリーズ」:
ローター部分の慣性が高いモデルです。ラクにハンドルを回し続けることができます。一定の速度で巻き続けたり、高速に巻く釣りに向いたシリーズです。
・「MGLシリーズ」:
低慣性なローターのモデルです。ローターが軽量だったり、非対称な形状だったりしてローターの回転が止まりやすく、巻き出しが軽くなっています。糸を巻いたり止めたりすることの多い、テクニカルな釣りに向いています。
・「低価格シリーズ」:
「コアソリッドシリーズ」や「MGLシリーズ」より下位の低価格の機種です。シマノでの正式名称が不明なため、ここでは「低価格シリーズ」と呼びます。コアソリッドシリーズやMGLシリーズのほぼすべての機種ではスプールを上下させる仕組み(オシュレーション方式)に「クロスギア式」が採用されていますが、低価格シリーズの機種では簡素な「カム式」が採用されています。
5つのグレード
さらに、価格帯や内部構造によって以下の5つのグレードに分類できます。
- 特別機
- 上級機
- 中級機
- 入門機
- バリュー機
それをまとめたのが下図です。

縦軸はグレードの高さを表現しています。
兄弟機の存在
上級機の3機種、中級機の3機種、入門機の4機種は共通部分が多い「兄弟機」となっています。また、バリュー機の19シエナと19FXは同時に発売された「双子機」となっています。これらの関係は図中の枠で示しています。

数値のヒミツ
このページを閲覧されるマニアの方はおわかりと思いますが、22ステラ、23ストラディックなどの「22」や「23」といったリールの機種名の冒頭につく数字は発売年を示します。22なら2022年発売ということです。
例外)低価格シリーズの大型番手
前掲のポジショニングマップには表示していませんが、低価格シリーズには、「6000番」や「8000番」といった大型番手が存在する機種があります。ただし、旧い世代の機種です(下表)。
機種名 | サイズ | 兄弟関係 |
---|---|---|
17セドナ | 6000番、8000番 | 16ナスキー |
18ネクサーブ | 6000番、8000番 | 13ナスキー、14サハラ、15セドナ |
11アリビオ | 6000番、8000番 | 05アリビオ |
各グレードの特徴と各機種の特徴
各グレードの特徴と各機種の特徴を短くまとめます。
特別機
特別機は独自設計のフルメタルボディ&メタルローターが特徴。
・22ステラ…シマノ汎用機の最高機種。ボディ、ローター、ドラグノブまですべて金属製の贅沢仕様。ドライブギアの特殊表面処理、ラインローラーの表面処理の他にもさまざまな特殊仕様が搭載されている「全部入り」機種。ギアボックスとフット部が一体のデザインであり高負荷時の剛性感・巻き心地は図抜けている。性能はもちろん細部にまでこだわった「所有する悦び」を満たしてくれる機種で「いつかはステラ」という人も多い。シマノ釣具部門の看板商品。22ステラはすべて独自設計のために発売当初はいつかの不具合があったが、現在は修正されている。コアソリッドシリーズの最上位機種であり、定速巻き、高速巻きが必要な釣り、剛性・耐久性の求められる釣りに。ボールベアリングの数は12個で23ヴァンキッシュよりウォームシャフトがさらに滑らかに動作する。シーバス専用機「25エクスセンス」のボディデザインはこれ。
機種名 | 22ステラ |
ボディ | 22ステラ |
ローター | 22ステラ |
ドライブギア | 22ステラ |
ピニオンギア | 22ステラ |

上級機
上級機以上には、飛距離やドラグの性能がアップする「超密巻き」(インフィニティループ)&「リジッドサポートドラグ」が搭載される。上級機のボディのリールフット側には金属が使用され、高い剛性をほこる。上級機の3機種は「兄弟機」であり、ドライブギアには同一パーツが用いられる。
・23ヴァンキッシュ…上級機の軽量機。マグネシウム&CI4+製のハイブリッドボディ、CI4+製ローター、CI4+製ハンドルで軽量さを徹底的に追求している。キャスト回数やアクションが多いテクニカルな釣り、タックル感度が必要な繊細な釣りなど、リールの自重の軽量さとローターの低慣性さを活かしたい釣りに最適。アジングやトラウト用で特に人気。ステラにせまる多彩な機能を搭載したMGLシリーズの最上位機種。ボールベアリングの数は11個で25ツインパワーXDよりウォームシャフトが滑らかに動作する。シーバス専用機「25エクスセンス」のローターデザインはこれ。
機種名 | 23ヴァンキッシュ |
ボディ | 23ヴァンキッシュ |
ローター | 23ヴァンキッシュ |
ドライブギア | 23ヴァンキッシュ |
ピニオンギア | 23ヴァンキッシュ |

・25ツインパワーXD…上級機の軽量・剛性機。24ツインパワー譲りのアルミニウム&CI4+製のハイブリッドボディに23ヴァンキッシュのCI4+製ローターを併せ持つキメラ。ボディ剛性が高い一方で、軽量・低慣性ローターを搭載しているため、大物狙いかつテクニカルな釣りに適している。ショアジギング、ライトジギング、ロックフィッシュなどで「かゆいところに手が届く」機種。全機種ラウンドノブ採用。耐久性の高いラインローラー「New Xプロテクト」が全リール中で初採用された。シーバス専用最上位「25エクスセンス」の登場で立場がやや危ぶまれているというが、価格の差はあるので……。ボールベアリングの数は10個で24ツインパワーより巻き心地がアップ。
機種名 | 25ツインパワーXD |
ボディ | 24ツインパワー |
ローター | 23ヴァンキッシュ |
ドライブギア | 23ヴァンキッシュ |
ピニオンギア | 22ステラ |

・24ツインパワー…上級機の剛性機。ボディはアルミニウム&CI4+製のハイブリッド構成であり、ローターはステラ譲りの金属製で「過剰なまでの剛性」を備える。ローターが金属製なのは汎用機ではステラとツインパワーだけ。ステラの弟分的な位置づけだが、ボディはヴァンキッシュデザイン。コアソリッドシリーズの2番手であり、巻き中心の釣りかつ剛性を活かした大物狙いの釣り物に向いている。上級機の中では最もコスパが高く、ステラを1台買うかツインパワーを2台買うか迷う人も多い。ボールベアリングの数は9個でファイト中に安心のリジッドサポートドラグが搭載される。
機種名 | 24ツインパワー |
ボディ | 23ヴァンキッシュ (アルミニウム) |
ローター | 22ステラ |
ドライブギア | 23ヴァンキッシュ |
ピニオンギア | 22ステラ |

中級機
中級機以上には「ウォームシャフトオシュレーション」&「ロングストロークスプール」が搭載されており、飛距離と巻き心地に定評がある。「超密巻き」機能がないため、トラブルレス性も高い。価格に対する実釣性能が高いので初~上級者まであらゆるレベルの釣り人におすすめできる。中級3機種のギア類はすべて共通の「兄弟機」。
・24ヴァンフォード…中級機の軽量機。CI4+製のボディに23ヴァンキッシュデザインのCI4+製ローターを搭載し、23ヴァンキッシュに次ぐ自重の軽さをほこる。ローターはパーツ価格的に23ヴァンキッシュよりグレードの低いCI4+素材が使われている可能性アリ。ボールベアリングはルアー釣りの実釣性能を十二分に確保する7個搭載。中級機で唯一のMGLシリーズであり、テクニカルな釣り全般で活躍する。大物相手というより、C3000までの番手が特におすすめ。バス釣り専用機「25コンプレックスXR」が派生している。
機種名 | 24ヴァンフォード |
ボディ | 24ヴァンフォード |
ローター | 23ヴァンキッシュ (価格差あり) |
ドライブギア | 23ストラディック |
ピニオンギア | 23ストラディック |

・23ストラディック…中級機の剛性機。ボディはアルミニウム&高強度樹脂製のハイブリッド構成で剛性を確保。ローターは高強度樹脂製だが、パーツ価格的にCI4+に近い剛性をほこると思われる。中級機の中では剛性や汎用性を求める人に向けたリール。「何のリールを買っていいかわからないけれど大物を釣りたい」人向け。特に、中級機の価格帯で4000番以上のリールが欲しい人にはコレ。シマノの中級の看板機であり、買って間違いのない機種。ボールベアリングの数は6個で必須箇所のすべてをカバー。
機種名 | 23ストラディック |
ボディ | 23ストラディック |
ローター | 23ストラディック |
ドライブギア | 23ストラディック |
ピニオンギア | 23ストラディック |

・25アルテグラ…中級機の汎用機。24ヴァンフォードのCI4+製ボディに23ストラディックデザインの高強度樹脂製ローターを装備したキメラ。ただし、ローターの素材は23ストラディックよりグレードが落ちる可能性アリ(パーツ価格的に)。1万円台ながら「ロングストロークスプール」と「ウォームシャフトオシュレーション」搭載で飛距離アップ&特有の巻き心地が味わえるシマノ随一の超コスパ機。自重は「普通」、剛性も「普通」という立ち位置であり、「いろいろな釣りに使えるリールが安く欲しい」という人に最適。エサやルアー全般に使えるC3000HGが特に人気。ラインローラーにボールベアリングが最初から搭載されているのでライントラブルが減る。ボールベアリングの数はエサ釣りでも必須級の5個搭載。
機種名 | 25アルテグラ |
ボディ | 24ヴァンフォード |
ローター | 23ストラディック (価格差あり) |
ドライブギア | 23ストラディック |
ピニオンギア | 23ストラディック |

入門機
入門機以上では、ドライブギアは超々ジェラルミン製(HAGANEギア)、ピニオンギアは超真鍮製となり、耐久性の高い内部機構を持つ。ルアー釣りの入門に最適。エサ釣りならこれで十分であることも多い。オシレーション方式は簡素な「カム式」。デザインやギアの共通性が高い4機種。
・22ミラベル…入門機の軽量機。21ナスキーのデザインをそのままにボディとローターの素材をCI4+にしたもの。軽量さを活かした繊細な釣り、テクニカルな釣りに向いている。21ナスキーのローターデザインのため、非対称ローターではないMGLシリーズの異端児。若干ではあるが低慣性さには欠ける。ボールベアリングの数は5だが、アルテグラと異なり、ラインローラーにはボールベアリングがなくハンドルノブにボールベアリング搭載。巻き心地重視のルアー用。入門用のエギング、バス、アジング、エリアトラウトなどに。
機種名 | 22ミラベル |
ボディ | 21ナスキー (CI4+) |
ローター | 21ナスキー (CI4+) |
ドライブギア | 21ナスキー |
ピニオンギア | 16ナスキー |

・21ナスキー…入門機の王道。ボディやローターは高強度樹脂製。コアプロテクトと防水ドラグノブ搭載で、下位の22サハラや23セドナより防水性能が高い。22ミラベルと同じ5箇所にボールベアリング搭載。ハンドルノブにボールベアリングが搭載されているため、巻き心地を重視した機種。さまざまな低価格機種のベースとなっている。入門機で迷ったらこれを買えば間違いない。なお、最小の500番だけは他機種の500番と似たりよったりのオールドデザイン。
機種名 | 21ナスキー | 21ナスキー(500) |
ボディ | 21ナスキー | 17ソアレCI4+500S (高強度樹脂) |
ローター | 21ナスキー | 13ナスキー500HG |
ドライブギア | 21ナスキー | 21ナスキー |
ピニオンギア | 16ナスキー | 17ソアレCI4+500S |

・22サハラ…入門機のコスパ機。21ナスキーのボディ&ローターを継承し、若干の巻き心地と防水性能を省略したもの。X-SHIPにネジ込み式ハンドル搭載で、シマノの低価格機では随一のコスパをほこる。1万円弱の同価格帯にダイワの「23レガリス」という超強力ライバルが出現したために影に隠れてしまったが、サハラのほうがギアの頑丈さでは上。巻き心地がゴロゴロになりにくい。ボールベアリングはピニオンギア上下、ドライブギア左右の合計4つ。ラインローラーにボールベアリングを追加すれば、身近なエサ釣りで困ることはあまりないだろう。
機種名 | 22サハラ | 22サハラ(500) |
ボディ | 21ナスキー | 17ソアレCI4+500S (高強度樹脂) |
ローター | 21ナスキー | 13ナスキー500HG |
ドライブギア | 21ナスキー | 21ナスキー |
ピニオンギア | 16ナスキー | 17ソアレCI4+500S |

・23セドナ…入門機の最安機。21ナスキーのボディやローターを継承しながら、防水性や巻き心地を省略し、さらにギアのグレードを落としたモデル。とはいえ、この価格でハガネギア搭載なのでギアの耐久性の高さは十分に実感できる。供回り式ハンドルなのでルアー釣りなら巻き心地に不満がでるかもしれないが、波止のエサ釣りでは必要十分。安かろう悪かろうではなく、耐久性が十分に高いのでメンテ次第で長い友になってくれる。ボールベアリングの数は3。
機種名 | 23セドナ | 23セドナ(500) |
ボディ | 21ナスキー | 17ソアレCI4+500S (高強度樹脂) |
ローター | 21ナスキー | 13ナスキー500HG |
ドライブギア | 23セドナ | 18ナスキー |
ピニオンギア | 16ナスキー | 17ソアレCI4+500S |

バリュー機
バリュークラスは、ドライブギアは亜鉛製、ピニオンギアは真鍮製となりギア類の耐久性はやや劣る。旧パーツ、旧デザインの流用、パーツの省略によって極力コストをカットしている。オシレーション方式は簡素な「カム式」。実売5000円未満という価格帯でありながら、性能はなるべく落とさない企業努力のカタマリ。子ども用に買ったのに、自分用として満足してしまう人も。長年釣りをしている人ほど「安かろう悪かろう」がいい意味で裏切られるそのクオリティに驚くはず。初心者でも手に取りやすいよう糸付きのラインナップがある。
・21ネクサーブ…ボディデザインは一世代前の16ナスキーで高強度樹脂製。ローターは21ナスキーデザインだが、パーツの価格差を見ると21ナスキーより素材のグレードはダウンしている可能性がある。ハガネギアではないのでギアの耐久性が落ちるが、それ以外は入門機セドナとあまり変わらない。「ルアー釣りをしたいけれど、ハマるかどうかわからない」というお試し用途にも。ボールベアリングの数は合計3個。
機種名 | 21ネクサーブ |
ボディ | 16ナスキー |
ローター | 21ナスキー (価格差あり) |
ドライブギア | 21ネクサーブ |
ピニオンギア | 21ネクサーブ |

・19シエナ…箱ナシ・糸付きのワゴン機。どんな糸を巻いていいのかわからない初心者でも安心して釣りを始められる。下位の19FXとともに「箱ナシ」販売なので、スプールに打痕が付いていることがあるので、購入時はチェックしよう。ボディデザインは二世代前の13ナスキーだが古臭くはない。素材は高強度樹脂。内実ともに19FXとほぼ同じだが、ボディ・ローターのパーツ価格は19FXより高価なのでグレードがより高い素材を採用している可能性がある。ボールベアリングの数は合計3個でピニオンギア上とドライブギアの左右。FXよりドライブギアに1個ボールベアリングが多いのでルアー釣りや大物狙いに向く。
機種名 | 19シエナ |
ボディ | 13ナスキー |
ローター | 19シエナ |
ドライブギア | 19シエナ |
ピニオンギア | 15セドナ |

・19FX…箱ナシ、糸付きのワゴン機。19シエナとほぼ同じ「双子機」。19シエナよりボディやローターの素材のグレードがやや落ちる可能性アリ。シエナよりドライブギアのボールベアリングが1個少ない合計2個で、巻き心地は落ちる。とはいえ、サビキやちょい投げなど、身近なエサ釣り専用で釣りを始めてみたいならFXで必要十分。ダイワで最安の「ジョイナス」のライバル機だが、巻き心地ならボールベアリング数とローラーベアリング搭載でFXの圧勝。
機種名 | 19FX |
ボディ | 13ナスキー (19シエナと価格差アリ) |
ローター | 19シエナ (価格差アリ) |
ドライブギア | 19シエナ |
ピニオンギア | 15セドナ |

(参考)ざっくり比較表
主要項目に絞ってざっくり一覧にしました。
機種名 | グレード | シリーズ | ボディ素材 | ローター素材 | BB数 | 重量 (C3000) | 超密巻き &リジッドサポートドラグ | ウォームシャフトオシュレーション &ロングストロークスプール | ハガネギア |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
22ステラ | 特別 | コアソリッド | マグネシウム or アルミ | 12 | 210g | ● | ● | ● | |
23ヴァンキッシュ | 上級 | MGL | マグネシウム&CI4+ | CI4+ | 11 | 170g | |||
25ツインパワーXD | アルミ&CI4+ | 10 | 215g | ||||||
24ツインパワー | コアソリッド | マグネシウム or アルミ | 9 | 200g | |||||
24ヴァンフォード | 中級 | MGL | CI4+ | 7 | 180g | ー | |||
23ストラディック | コアソリッド | アルミ&高強度樹脂 | 高強度樹脂 | 6 | 225g | ||||
25アルテグラ | CI4+ | 5 | 220g | ||||||
22ミラベル | 入門 | MGL | CI4+ | 205g | ー | ||||
21ナスキー | 低価格 | 高強度樹脂 | 240g | ||||||
22サハラ | 4 | ||||||||
23セドナ | 3 | 245g | |||||||
21ネクサーブ | バリュー | 255g | ー | ||||||
19シエナ | 250g | ||||||||
19FX | 2 |