今回は、シマノのシーバス専用スピニングリールのシリーズ「エクスセンス」の中級機「23エクスセンスXR」についてまとめます。
エクスセンスシリーズは、シマノのシーバスのルアーフィッシングに求められる性能が詰め込まれた専用ラインナップです。シリーズで中級機となる「エクスセンスXR」はどんな機種なのでしょうか。
この記事の前半では、「18エクスセンスCI4+」から「23エクスセンスXR」にアップデートした際に新しく搭載された機能を紹介します。
後半では、上位機種の「21エクスセンス」と下位機種の「24エクスセンスBB」および、「23エクスセンスXR」とよく比較されるシマノの機種(ヴァンフォード、ストラディック)との比較をおこないます。
24ヴァンフォード登場にともなって記事を更新しました
「23エクスセンスXR」には 3つの機能が新搭載
「18エクスセンスCI4+」から「23エクスセンスXR」に進化して追加された機能は3つです。
1)マイクロモジュールギアⅡ、2)サイレントドライブ、3)ロングストロークスプールです。
ボディ材質は引き続きCI4+ながら、デザインの刷新で軽量化に成功しています(下表)。
リール画像出典:シマノカスタマーセンター
価格は据え置きで、性能がアップグレードしています。
これらのアップグレートについて、サクッとみていきましょう。
1)滑らかで強い「マイクロモジュールギアⅡ」
画像出典:シマノHP
「マイクロモジュールギアⅡ」はギアの歯を小型化することで、ギアの歯数を増やしたギア「マイクロモジュールギア」の進化版です。
画像出典:シマノHP
「マイクロモジュールギア」によって、ギアの接地面を複数で支えるためギアの強度がアップしたうえ、巻き心地のなめらかさがアップしました。「マイクロモジュールギアⅡ」では設計が見直され、音鳴りの低減と巻き心地の滑らかさがさらにアップしました。
ルアーの水のつかみ具合や潮流の変化を感じ取るとる助けとなります。
「ギアのシマノ」の本領発揮ですね。
マイクロモジュールギアⅡ
かろやかで滑らか。珠玉のギアフィール。
出典:シマノHP
最先鋭の歯面設計、シマノならではの製造技術によって進化したマイクロモジュールギアⅡ。ギアの歯、ひとつひとつの歯面から設計を見直し、理想的な歯形状を追求。音鳴りの低減、滑らかなギアフィーリングの向上も達成しました。
2)静かで巻き心地アップ「サイレントドライブ」
画像出典:シマノHP
「サイレントドライブ」とは、リールのボディ全体の基本設計の見直しです。これによって静かでなめらかな巻き心地を実現しています。
「マイクロモジュールギアⅡ」との相乗効果でルアーフィッシングで重要な水中の情報をより多く得られるようになります。
サイレントドライブ
細部まで徹底した、静謐なる一体感。
シマノHP
ボディ全体の基本設計、駆動関連部品をひとつ ひとつ見直し、部品間の微細なガタ、隙間、揺れを細部に至るまで徹底的に排除。改善の対象箇所はドライブギア、ウォームシャフト、ウォームシャフトピン、ウォームシャフトギア、摺動子ギアなど多岐に渡る。あらたな次元での滑らかな回転性能、静粛性を伴った巻きごこちを実現しました。
3)飛距離がアップ「ロングストロークスプール」
画像出典:シマノHP
「ロングストロークスプール」は、その名の通り、スプールのストローク(糸巻き面の縦の長さ)を長くしたスプールです。糸の減りが遅くなるので、キャスト時のスプールエッジ等に対する放出抵抗が低減され飛距離のアップに寄与します。
ルアーで探れる範囲が増えますので、より直接的に釣果のアップが期待できます。
ロングストロークスプール
ロングストローク設計のスプール
シマノHP
スプール糸巻き部の幅を長くすることで、キャスト後半のラインの減り量を抑えることができ、キャストフィーリングと飛距離の向上に貢献します。
「23エクスセンスXR」アップデートのまとめ
「23エクスセンスXR」のアップデートをまとめましょう。
- ギアの強さ、滑らかさ、静粛性のアップ(マイクロモジュールギアⅡ)
- 静かで滑らかな巻き心地(サイレントドライブ)
- 飛距離アップ(ロングストロークスプール)
- 軽量化
いずれもシーバスフィッシングで有効な機能ばかりですが、特に繊細・テクニカルな釣りへの対応力がアップしたアップデートと言っていいでしょう。
ラインナップはC3000M、C3000MHG、3000MHG、4000MXGの4つで、シーバスフィッシング専用機ならではの絞った番手となっています。
「23エクスセンスXR」と他のシマノ製スピニングリールとの比較
後半では以下のリールの比較をします。
・「23エクスセンスXR」……エクスセンスシリーズ中級機
・「21エクスセンス」……エクスセンスシリーズ最上位
・「24エクスセンスBB」……エクスセンスシリーズエントリー機
・「24ヴァンフォード」「23ストラディック」……「21エクスセンスXR」と同価格帯
機能比較(材質以外)
まずは、材質以外のリールの「機能」を比較します。
メーカー価格
メーカー価格からわかるように、エクスセンスシリーズの最上位は「エクスセンス」です。入門モデルが「エクスセンスBB」で、中級機種が「エクスセンスXR」というわけです。定価ベースで2万円ずつくらいの差があります。
4つの新機能
シマノの中核リールの「24ヴァンフォード」と「23ストラディック」には、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、アンチツイストフィン、デュラクロスの4つの機能が搭載されています。
これらの機能をざっくりいえば以下の通りです。
- インフィニティクロス:耐久性がアップしたギアデザイン
- インフィニティドライブ:高負荷でも滑らかに巻けるシャフト構造
- アンチツイストフィン:ライントラブルを低減するフィン構造
- デュラクロス:なめらかかつ高耐久のドラグワッシャー
これらの機能は「23エクスセンスXR」に搭載されていませんし、価格的に上位の「21エクスセンス」にも搭載されていません。
シマノでは汎用リールをベースとして専用リールを作りますから、これらの機能がエクスセンスに搭載されるまでまだ時間を要します。
「24ヴァンフォード」と「23ストラディック」については以下の記事をご覧ください。
ボールベアリング
機種ごとに、ボールベアリング(BB)の搭載数が少しずつ違います。
これが各機種の差別化に役立っています。
ベアリングの搭載箇所は、以下のようにステップアップします。
基本的にボールベアリングは多ければ性能アップが望めます。
どこにベアリングが搭載されているかがポイントです。
「24エクスセンスBB」には5個ボールベアリングが搭載されています。これらは中級クラスのリールにはあってほしい基本の箇所です。
内訳は以下の通りです。
- 「メインギアの左右」:低価格リールにも必須級の搭載箇所です。
- 「ピニオンギアの上下」:シマノでは「Xシップ」と呼ばれる構造の一部で、高負荷の巻きの滑らかさに直結します。
- 「ラインローラー」:おもにライントラブルを低減させます。
「23ストラディック」では、「ハンドルノブ」に1個、「24ヴァンフォード」にはさらに1個ボールベアリングが追加されます。これらにより主に低負荷時に巻きのなめらかさがアップします。ルアーフィッシングで水中の情報が少しでも欲しい釣りにはあってほしいアップデートです。
「23エクスセンスXR」以上には、スプール内部に2個のボールベアリングを追加した「リジッドサポートドラグ」が搭載されています。これによりドラグがよりなめらかに出るようになります。これは汎用スピニングリールではツインパワー以上の機種に搭載される機能です。
最上位の「21エクスセンス」にはローターナット部に1個、ウォームシャフトギア部に1個のボールベアリングが搭載されます。これらは巻き心地のアップに貢献しています。11個のボールベアリングは「23ヴァンキッシュ」と同等です。
なお、「21エクスセンス」にはラインローラーに特殊な防水BBが使用されていて、特に壊れやすいラインローラーのボールベアリングをケアしています。
ラピッドファイアドラグ
シマノの「シーバス専用リール」に搭載される特別なドラグが「ラピッドファイアドラグ」です。エクスセンスシリーズの全機種に搭載されています。これはダイワの「クイックドラグ」のようなものでドラグを瞬時に緩めたり締めたりしやすくなっています。
ラピッドファイアドラグ
ドラグノブの回転数に対するドラグ力の変化が大きく、ストラクチャー周りで魚を止めたいとき、足元で急に突っ込まれたときなど、瞬時にドラグ調整をしたいシチュエーションで非常に有効な機能です。
シマノHP
マグナムライトローター
シマノの汎用スピニングリールには、従来の剛性重視のコアソリッドシリーズと、軽量・低慣性がウリのMGLシリーズ(クイックレスポンスシリーズ)があります。
「マグナムライトローター」はMGLシリーズに搭載されるローターです。ローターを軽量にし、かつ左右非対称の形状にすることで低慣性なローターを実現しました。これによって巻き出しが軽く、すぐに回転が止まるリールになります。ルアーを繊細に操作する釣りに最適です。
マグナムライトローター
回転慣性を低減化しローター剛性を強化
シマノHP
左右非対称のローター構造を採用し、操作性と感度の向上を求めて、異次元の回転の軽さを実現したマグナムライトローター。さらにラインローラーの軽量化、ベールのチタン化、ローター肉厚の最適配置を行い回転慣性の低減に成功した。
材質の比較
最後に、リールのパーツに使われる材質を見てみましょう。
材質の差よって強度・剛性・軽量さが変わります。
ローターはボディの上に載るハンドルを回して回転する部分。
ベール(ベールアーム)は糸を誘導する針金状の部分。
スプールリングはスプールエッジを構成するパーツ。
画像出典:シマノHPから画像改変
リールに使用される素材の重さに対する強度(比強度)や重さに対する変形のしにくさ(比剛性)は、おおよそ下記の通りだと考えられます。
チタン > マグネシウム > アルミニウム > ステンレス > CI4+ > 高強度樹脂
※素材には様々な種類があり、特に金属の合金は特性がまちまちです。リールの価格からの推測も入れています。(参考:比強度の一覧表、参考:マグネシウムの基礎知識、「マグネシウム合金」という素材)
ボディ材質
「23エクスセンスXR」は「18エクスセンスCI4+」の後継バージョンですので、ボディ素材は「CI4+」を特徴としています。樹脂素材ですので一般的に金属製より剛性は落ちますが、シーバスフィッシングでは必要十分な強度です。軽量さによって感度や操作性がアップしています。
ローター材質
ローターの材質がヤワだと、大物を掛けたときにラインローラを支える部分がたわんで巻き取りに影響がでます。
「23エクスセンスXR」はCI4+製のローターとなっています。最上位の「21エクスセンス」のローターもCI4+製ですので、シーバスフィッシングでは十分な強度とメーカーは判断しているようです。なお、さらに頑丈な金属製のローターが欲しい場合は汎用機の「24ツインパワー」か「22ステラ」を選択することになります。
シーバスも大物となると引きは強くなりますが、普段の使用ではCI4+が最適解なのかもしれません。
ベール材質
「23エクスセンスXR」にはチタン製のベールが採用されています。チタンは強度に優れた素材でシマノのリールでも最上位のベールとなります。
スプールリング材質
スプールリングも傷が付きやすいので工夫が凝らされる箇所です。「23エクスセンスXR」には、アルミスプールにスプールリングはアルマイトになっています。こちらは下位から中級クラスのリールに用いられるセッティングです。
「23エクスセンスXR」総まとめ
以上、「23エクスセンスXR」は、CI4+による軽量化、リジッドサポートドラグによるドラグの滑らかさ、ハンドルノブに2ボールベアリング搭載&マグナムライトローターで水中の情報を逃さないといったシーバスフィッシングの上級者でも満足できるセットアップをしています。
エクスセンスシリーズ内で、「釣る」という能力においては、最上位の「21エクスセンス」に迫る性能と考えてよいでしょう。コスパがとても高い機種です。
汎用機との違い
「23エクスセンスXR」と派生元の「20ヴァンフォード」の違いは以下の通りです。
- 23エクスセンスXR = 20ヴァンフォード+「ラピッドファイアドラグ」「リジッドサポートドラグ」
「23エクスセンスXR」を買うことの意義は、「ラピッドファイアドラグ」や「リジッドサポートドラグ」です。汎用機よりもドラグ性能という点でシーバスフィッシングに適しているのです。
ただ、「24ヴァンフォード」や「23ストラディック」には、インフィニティクロス、インフィニティドライブ、アンチツイストフィン、デュラクロスといった最新機能が搭載されていてこちらも魅力です。
シーバスフィッシング以外の釣りもしたい人で「ラピッドファイアドラグ」や「リジッドサポートドラグ」が不要な人は「24ヴァンフォード」を選ぶほうがいいですし、「マグナムライトローター」も不要で青物等引きの強い魚も対象としたい人は「23ストラディック」を選ぶほうがいいでしょう。
使用目的にあわせて選んでみてください。
エクスセンスシリーズの関係図
最後に、「ラピッドファイアドラグ」搭載のシーバス専用機エクスセンスシリーズの関係性をまとめます。
24エクスセンスBB
↓
ローター剛性UP+ドラグ性能UP+低慣性ローター
↓
23エクスセンスXR
↓
ボディ剛性UP+巻き心地UP+防水ラインローラーBB+高耐久スプールリング
↓
21エクスセンス
「23エクスセンスXR」から「マグナムライトローター」と「リジッドサポートドラグ」の良さを体感できます。「24ヴァンフォード」発売後もなお買う価値があるリールです。
シマノ「24ヴァンフォード」の記事はこちら
シマノ「23ストラディック」の記事はこちら
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