エサと流れ
適水温の幅が広い魚の場合は、水温だけでは魚の居場所を絞り込むことができません。次の手がかりはエサです。適水温であれば魚の基本的な関心事は繁殖と捕食です。回遊魚の場合、エサのために移動や待機をします。魚によってはその時食べているエサ(のシルエット)に似ているものに好反応を示すものが多くいます。ブリの場合、マイワシを食べているときと、アジを食べているとき、カタボシイワシを食べているとき、カマスを食べているとき、小さいタチウオを追っているとき……どのエサを今食べているのかを把握することは釣果アップにとても重要なポイントとなります。
いまどこでエサとなる魚がいるかは、SNSや釣果情報サイト、海釣り公園の情報、釣具店の情報をネット等で調べるのが手っ取り早いです。その上で以下に紹介するようなエサがたまりやすい場所を知ると、その情報をもとにさらに広い範囲のエサの分布状況を推定することができます。
まず、大原則としてフィッシュイーターのエサとなる魚(ベイトフィッシュ)もまたその魚の適水温でエサを食べて生きています。エサを効率的にたくさん食べるためにはどこにいけばいいかというと、ズバリ「流れ」のあるところです。流れの無いところより流れのあるところのほうが、エサが向こうからやってくるのでエサと遭遇する確率が高くなります。
流れにもいくつか種類があります。ここでは最も基本的な川の流れ、潮の流れ、風の流れの3つを取り上げます。
川の流れ
最も強力な流れは川の流れです。アジやイワシといった動物性プランクトンを食べるエサの場合、河口エリアが狙い目です。川から栄養素が供給されますので、それを食べる動物性プランクトンが集まり、小魚が集まり、大きな魚も集まる、といった具合になっているのです。流れが栄養素を運ぶ撒き餌のような役割をしているのです。流れには栄養分の他にも水深、酸素供給のメリットもあります。潮通しの良くない港湾の有名な海釣り公園の多くは川の影響を受ける場所につくられています。淡水湖であればやはりインレット(流れ込み)がよく釣れるポイントですし、ゆるい流れの河川の小規模な水門や流入河川は超一級ポイントなのも同じ理由です。

海の魚の場合、淡水が流れ込むのでイメージとしては魚が嫌がるように思えますが、淡水は海水より比重が小さいので、底の方には意外なほど海水の領域がくさび形に広がります(下図)。

また、雨のときや雨のあとなんかは食い渋るという人がいます。確かに大雨が長引けばそうなることもありますが、短期間の雨では河口域では逆に活性アップなんてのも多々あります。上流からエサがたくさん流れてきますからね。そんなとき、河口域以外の場所では、アタリすら無くなったりもします。河口域へと魚が移動するためだと思います。
ただし、あまりに大雨が長く続くと底の方の泥が巻き上げられたり、水潮といって塩分濃度が低くなりますし、下水処理場の放水も重なったりすると一気にだめになったりします。河口域でも雨の程度によっていい悪いが出たりしますので注意が必要です。
気温の影響を強く受けるのも河口域の特徴です。水温がある魚の適水温より高く、気温が低い場合、河口域では気温の影響で水温が下がりやすくなります。魚にとって過ごしやすい水温が生まれやすく、河口域が狙いめです。一方で水温が適水温付近で気温がさらに低い場合、河口域の魚の活性は低下します。こんな時は、河口域より風や流れがプロテクトされているエリアのほうが、底の水温が高く魚が集まったりします。
潮の流れ
潮の流れも重要な要素です。水面、特に海面は月の引力を受けて変動をします。その影響力の強さで、大潮、小潮といった潮回りがあるのはご存知だと思います。満潮のおよそ6時間後に干潮が来ます。その変動で流れが生じ、魚も大きく影響を受けます。日々の潮回りで生じる潮の流れに加えて、より大きな海流の影響も重要です。太平洋側の場合は、黒潮の流れ次第で釣果がガラリと変わることがあります。大阪湾や東京湾では黒潮の流れが一気に流入することがあって、そのタイミングで釣れるということも言われます。そうした潮の流れがよく当たる場所をまとめて「潮通しがよい」といいます。
典型的には以下の通りです。
- 流れが少ない湾のようなポイントでは、強い流れが生じにくく、潮通しが良くないので、エサひいては回遊魚が来ないリスクもあります。ただし、エサをとどめる要因があれば、回遊魚も定期的に回遊しますので絶好のポイントとなります。
- 沖堤防のようなポイントは、潮通しが良いためにエサの小魚も回遊魚もコンスタントに立ち寄る可能性が高いです。ただし魚をストックする要素がなければ通過する傾向もあり、長期的に釣れ続くようなことは起こりません。
性質の異なる潮と潮とがぶつかる部分を「潮目」と呼びます。そうしたポイントにエサが集まり、大型魚も集まってきます。潮目は動くものですが、できやすいポイントも存在します。
ちょっと時合の話
潮の話でしなければならないのは時合の話です。具体的には「時合」の章で書きますが、魚がよく釣れるのは朝夕のマズメを除き、一般的には干潮満潮からの潮の動き出しが有効とされます。エサが一斉に動き出しますからね。湾や河川のようなポイントの典型的な高活性パターンは、下げ潮であることが多いです。上げ潮で回遊魚を含めて魚が流入し、下げ潮でエサが「一斉に」浅瀬から退去しますので撒き餌効果で高活性になるのです。
ブリの大型狙いで個人的に実績があるのは「干潮前後」です。ただし、やや河川側のポイントになると、干潮満潮にかかわらず「潮位が高い」日のほうが実績が高くなります。これは潮位に応じて回遊魚が河川に上がるということを示唆しています。釣り場によって異なるので、タイドグラフと釣り場と釣果を一緒に記録として残すとパターンが見えてくることがあります。
より一般的には、流速が最大となる干満満潮の3時間後も有効とされます。個人的には、潮の動き出しから90分前後の変化量が最大となる時間がポイントだと思っています。実績順に潮の動き出し>=90分前後>3時間後だと思っています(大阪湾の場合です)。具体的な流速は第五管区海上保安部の潮汐・潮流情報(推算値)を参照するか、MIRC潮流予測を参照するのが便利です。
風の流れ
3つ目の要因は、風の流れです。ただし、風の流れは川の流れ、潮の流れに比べると流れを生み出す力が弱いので、川がなく潮があまり動かない場所、時間に有効になってくる要因となります。
特に止水域の水面では風は小型の餌を移動させる力になります。風によって水温が変化したり水中の酸素量も影響を受けます。風の当たる面がポイントとなるのです(風表なので釣りはしにくくなります)。風が当たる面は流れで水面が持ち上げられ、水面下にその流れを逃がす流れができます。その流れにエサや魚が集まるとされます。
個人的には、低水温期に高気温で暴風が吹くと、活性が高まりいい思いをしたことがあります。風雨の関係で人間は釣りがしにくい日は、案外チャンスなことも多いです。
流れを意識した釣り座選び
流れから釣り座を選ぶ方法について基本を紹介します。
回遊方向を意識する
流れに逆らって泳ぐのが基本的な魚の仕組みです。メダカを入れた水桶に、水流を発生させると流れの上流に向かってメダカが泳ぐのは小学生の理科でおなじみの実験でしょう。川の鯉を見ると頭が上流を向いています。魚がエサを見つけたり、呼吸をするうえで、自然な状態なのは流れに正対しているときなのです。

ブリ等は基本的に1匹釣れたら連発するということはあまりありません。1匹についてきた魚は釣れるのでダブルヒットは時々あるものの、1匹を釣り上げた直後、魚が散って口を使わなくなるということがあるのです。そうなると、最初に回遊魚の群れにアプローチできる釣座が大事ということになります。たとえば下図のように河口部の場合、下流部から魚が入るので下流部の釣座が有利になります。

エサはどこにあるか
魚はエサを求めて移動します。魚の移動方向が推定できたとして、目的となるエサがどこに溜まりやすいのかわかっていないと片手落ちです。
典型的な例を示します。
- 1)流れが当たる面
- 2)反転流
- 3)流れの合流点
1)流れが当たる面
防波堤に流れが当たる面はエサが溜まりやすいです。流れでエサが寄せてくるのに加えて、岸壁の付着物が海中に落下しますので、魚がたまるのです。

魚礁などの場合も同じです。たとえば、(財)漁港漁場漁村技術研究所は、マアジが魚礁の潮上に集まるということを報告しています。

渓流界隈では、流れの当たる岩などを「ウケ」といいます。
2)反転流
「流れが当たる面」の他にも、流れが通過する反作用として生じた渦、「反転流」部分もエサが溜まる場所として知られています。
そういった意味で、漁礁などの障害物の潮下側も見逃せません。流れがダイレクトに当たらず魚としても休憩しやすいのです。どっちがいいのかはケースバイケースで、魚の活性や魚の種類に応じて釣り分けをします。



この話の詳細は、以下の本を参照してください。
3)流れの合流点
「潮目が釣れる」のは、流れと流れがぶつかってそこにエサがつくために、捕食効率が高く、魚が集まっているのためです。川釣りでは流れの合流点は一級ポイントとなりますが、エサが集まるために捕食効率が高く、魚の典型的なつき場となっています。渓流では流れの合流点のことを「モミアワセ」といい、一級ポイントとして知られています。

「カケアガリ」や「敷石の端」が釣れるのは、流れの方向によって「流れの当たる面」となったり、反転流と合流して「流れの合流点」となったりして、エサが溜まりやすいために回遊ルートになるためです。


流心のキワにある反転流にも合流点があります。川の流れのシミュレーションを見ると、堆積物は最も流れが速いポイントのそばで流れが反転してゆるくなるポイント(インサイドベンドの下流側)だったりします。こうした流れの変化点がエサが溜まるポイントになります。「ハードボトムとソフトボトムの境目」が釣れるのもそういう理由です。

しかし、流れがあまりはっきりしない場合はどうすればいいのでしょう。ウキ釣りや海面の様子を観察すればある程度の判断はできます。しかし、表層と底の流れの方向が異なるいわゆる二枚潮の場合など、素人目には流れの方向を把握しにくいケースも多いです(この場合、ウキを沈めてどこからウキが返ってくるかで判断します)。
大まかには、海の流向を予測するHPがあるのでそこで確認してもいいです。ただし、観測データを見ると水深によって流向は細かく変化するため把握がかなり難しい要素となります。幸運にもそうしたデータが得られる釣り場の場合は、その釣り場の典型的なパターンを把握することから始めることができます。そうでない場合は、満潮からの下げのときに釣れた、など細かく記録を残すことによって特定の条件でよく釣れるというパターンを発見できる可能性はあります。
流れを意識して釣り座を選ぶ
一度にたくさんの要素を同時に踏まえるのは大変ですので、流れの強い順に選んでいくとよいです。オーソドックスには、川の流れが影響する場所、沖向きの場所、風が当たる場所3つを探せば見つかるはずです。たとえば、大きな湾に位置する沖堤防に河口部が向いている場所で、潮目や風が当たる面を攻めるなどと複数の要素が絡まる場所があればなお最高です。

上記では、川の流れ、潮の流れの合流が沖堤防にぶつかる点がエサの集約されるポイントであり、魚の回遊経路の最上流にも当たるため、最も有望なポイントです。




















































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