光
光の差し込む方向も釣座選びに有効です。魚の中にはタチウオのように光に集まる性質(走光性)を持つ魚がいることはご存知でしょう。ルアーフィッシングでアジやスズキを狙うとき「明暗を釣れ!」ということをよく耳にします。魚と光について考えてみます。
背光反射とは
実は未解明問題「虫が光に引き寄せられる理由」がついに判明!で紹介された、「背光反射」を取り上げます。
夏になると、電灯の光に虫が集まる様子を目にしたことがあるでしょう。しかし、なぜ虫が光に集まるのか、長い間未解明でした。そこで、ある実験では飛ぶ虫に対して様々な光の当て方をして観察してみました。すると虫は光に対して一直線に向かっていくのではなく、光に背を向けるということがわかったのです。これが背光反射(はいこうはんしゃ)、明るい方向に背中側を向ける反射的な行動です。背光反射が連続的に起こる結果、虫が光に集まっていったのです。


なぜ背光反射があるのかというと、虫や魚の姿勢制御機能として必要だからです。虫より身体の大きい人間の場合、重力で「上下」を把握することができますが、身体の小さい虫の場合は重力だけで十分に「上下」の認識ができません。そこで小さな虫は通常太陽の光が来る方向を目印に「上」とすることにしました。光の来る方向に背を向けることで、重力による「上下」認識と同様の機能を手に入れたのです。
しかし、この姿勢制御方法には弱点ができてしまいました。電灯など人工の光が登場したことで、そちらを「上」だと認識する機会が増えたのです。電灯の周りをぐるぐると飛び回る虫は常に背中を電灯に向けようとするあまり、電灯のそばから離れられないうえに周りを飛び続けることになりました。
魚の場合、虫より身体が大きくても浮力の影響で重力を感知しにくいがために、背光反射を利用して姿勢制御をします。無重力の宇宙でメダカの実験をしたときに、一定方向から光を当てて「上」を知らせたことも背光反射の利用例として知られています。

思えば、魚には背が暗色で腹が明るい色のものが多くいます。これは海面(上)から見たときに魚の背中が海や海底の暗色と同色系統で紛れやすくなるためですし、海底(下)から見たときには魚の腹の色が空の色と紛れて見えにくくなるためです。きちんと「上」を把握して泳がなければそのカムフラージュ性は十分に発揮されません。魚にとって姿勢制御は生死に関わるとても大事なことなのです。
ちなみに、前述の背光反射の実験では遠くからの光(85メートル先)は虫を引き付ける要因とはなりませんでした。あくまでも近くを通りかかった虫が電灯に集まるようです。それならば、タチウオ釣りで用いる集魚灯は、近くを通ったタチウオを引き寄せる要素とはなっても、遠くの魚を引き付ける力はないのかもしれません(光がさらに届きにくい水中では特に)。
光を背にするとものが見やすい
視覚に頼る多くの生き物にとって光を背中にすることは、もう一つメリットがあります。それは、「ものが見やすい」ことです。光が来る方向に物体があると、逆光状態になり物体の色はシルエット化して見えにくくなりますが、光を背にする順光状態にすれば、物体を識別しやすくなります。

魚がエサを見つけための行動原理として順光を意識して行動しても不思議ではありません。とくに流れの影響が少ない場所では太陽光を背にしてエサを見つけやすいように回遊することがあるのではないでしょうか。
スズキ等待ち伏せタイプの捕食をする魚は日陰の暗い側に身を隠して、明るい場所にいる見つけやすいエサを狙ったりします。これも言われてみれば光を背にして餌を探すケースのバリエーションです。光を背にすることで、こちらからは見えやすいが相手からは見えにくい状況を手に入れることができるのです。

酸素
言うまでもなく魚にとって、酸素は生きるための要素です。釣った魚もエアーポンプのブクブクがなければすぐに弱ってしまうことがありますよね。一般に、魚は2ppmでは生活できず、3ppmで他の水域に移動し、4ppmで不快感とストレスを覚え、5ppm以上で通常の生活ができるとされています。これは魚種と成長段階によって異なってきますので目安です。
水中の酸素量は、タナ、雨、流れ、風、水温、植物プランクトン、動物プランクトン等の影響で変動します。基本的に酸素が多い場所のほうが魚にとっては好都合ですが、一定期間の釣果との相関を観察したところ、酸素飽和量は多ければ多いほど釣果がよいわけではなさそうです。ある一定の酸素飽和度に達するとそれ以上は釣果の向上は見られませんでした。ですので、低すぎる酸素飽和度が釣果を落とすと考えたほうがスッキリ来るかもしれません。
※このことは、研究報告と一致します。だいたい、酸素飽和度75%を下回ると急激な摂餌率の低下が起こるマアジやおそらくスズキと、マダイ等の45%を下回ると影響がでるといった具合に、魚によってその影響度が異なります。
暑い時期になると、東京湾や大阪湾では酸素の少ない貧酸素水塊が底のほうで発生することが多くあります。青潮や苦潮と呼ばれる現象もその一つで、ジャッカルの金井氏によれば「暑い時期に表層がクリア」だと苦潮が発生している可能性を推察するそうです。
秋でも水通しが良くなく、河川の影響を受けやすい場所では、河川の水が底の水をブロックしてしまい、低酸素を引き起こします。これは海上保安庁の公開している水質データからわかります。底にぶっこんだアジがすぐ死ぬ場合はまっさきに低酸素を疑います。湾奥でこうしたポイントは最もブリやタチウオが遅くに入ってくる場所です。
そんなときは表層付近を攻めるか、酸素が多い場所を探すことが釣果を得るステップになります。たとえば、干潮で浅瀬が空気に触れるほど干上がる場所では、そこが満潮で満たされたときには周囲には酸素いっぱいの水が出現することになります。風がばんばん当たるところを探したり、川の流れが強く当たる場所を探したりします。
ちなみに、淡水で水生植物が酸素を供給するというのは、あまりありません。水中に生えるごく一部の植物のみ光合成で水中の酸素を増加させることをするそうです。水面一杯を覆う植物は、一見酸素を供給しそうですが、その逆で、酸素が薄くて魚が生きにくいという可能性があるのです。
スズキの場合、溶存酸素量が低下するとより低水温を好むことが報告されています。絶食状態のマアジも低水温を好むようになることと合わせて、低水温環境で代謝を低下させてエネルギーを保持するためといいます。https://www.kaiseiken.or.jp/publish/reports/lib/2002_04_02.pdf
酸素が多くなるのは、表層、降雨、流入河川、潮通しのいい場所、風の吹き付ける場所がポイントです。
塩分濃度
海の場合、塩分濃度も気になるところです。回遊魚なら塩分濃度が高いところを好むとされています。河口部で釣りをするのであれば、あまり表層を狙うより、塩分濃度の濃い層、たとえば5メートルより深いところを狙うほうが効率的だと思います。ただし、餌を追っているときは塩分濃度が低い河口の水面側に回遊魚がいることもありますので、ケースバイケースで判断するのがいいでしょう。
面白いのは、塩分濃度の変わるちょうど境目のあたりに小魚となるエサがたまりやすいということです。魚探で眺めるとわかります。比重の問題で小魚のエサとなるプランクトンが溜まりやすいのかもしれません。塩分濃度が作り出す「タナ」を意識することで、釣果の向上が見込めます。
塩分濃度を探るのは、釣れている魚を見る等で間接的に知る方法があります。よく知られたことで、キビレのほうがクロダイより汽水寄りにいます。また、ボラは汽水域にいますし、それより少し塩分濃度が高いとコノシロ、サッパがいます。カタクチイワシ、サバ、アジも塩分濃度が高めな場所が好みです。
濁り
あまりにも濁りがきついと、魚にとっては悪影響なことが多いです。しかし、超クリアよりそこそこの濁りであれば逆によいことが多いです。濁りにもたくさんの要因があって、すべてを把握するのは難しいです。典型的には、白っぽかったり、茶色っぽかったり、緑っぽかったり、なにか黒っぽい水に見えたり、水の色を手がかりにします。
濁りの中では、まず海が白っぽく見える青潮は、酸素が欠乏した証拠でよくありません。白茶色の濁りは泥が混在した水の可能性があって、その場合はあまりよくありません。緑系のささ濁りや薄い茶色の場合は比較的良い状態です。茶色は植物プランクトンが多くなってきた可能性があります。よい状態だとベイトフィッシュがたくさん泳いでいたりしますので良し悪しの判断はカンタンです。
回遊魚に限らずフィッシュイーターは、濁りを利用した狩りをしたりします。光の明暗を利用するように、主に下層の濁り側にフィッシュイーターが潜んで、クリア側に来るエサを待ち受ける塩梅です。これは魚によるでしょうから、頭の片隅においておくと役立つことがあるかもしれません。
以上、とりあえずメモがてら思いつくことを書き散らしてみました。多くのことを書きましたが、私は迷ったら何かの境目を意識するようにしています。水温の境目、流れの境目、明暗の境目、酸素飽和度の境目、塩分濃度の境目、濁りの境目…エサが溜まりやすいのはそうした場所が多いからです。






























































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