Q.糸を細くすると釣れることがあるのはなぜ?魚は近視だから見えないのでは?
A.糸を細くしても魚には見えています。また側線による優れた物体検知能力もあります。
たしかに人間の視力に当てはめたら魚は近視です。しかし、魚と人間のピントの合わせ方は異なります(水晶体の厚さ調節の人間V.S.水晶体を動かす魚)。魚は人間よりすぐれたコントラスト識別能力と動体視力を持っています。メジナの視力は0.13程度ですが、ナイロン糸0.1号相当の絹糸を十分視認できるそうです(※資料1、p25)。
また、魚が暗闇で糸にぶつからないという実験もあります(※資料2やURL1を参照)。クロダイを入れた水槽内に糸を張り巡らせておくと、電気を消した状態でも糸には触れないでエサを食べます。視覚でなく側線で物体を感知していることが関係していると思われます。側線は低周波の感度がよい仕組みなので、太いものほど検出されやすくなります。

糸を細くして釣れたのは、視覚以外の要素が関係していると思われます。たとえば、太糸は抵抗が増し、エサの流れ方やエサをくわえたときに違和感を生じさせる可能性があります。ものの計算によるとウキの表面積より、糸の表面積のほうがよっぽど大きくなるそうです。食い込みアップを狙ってウキの余浮力を気にするなら、糸の太さにも気を使わないと片手落ちなのです。糸が細いと側線のセンサーもすり抜けやすくなりますね。
資料2の実験にもう一つ興味ぶかい事例があります。水槽のクロダイに真っすぐのハリスとハリを付けたオキアミを与えると食べますが、ハリスにコイル状の糸グセをつけて与えると食べませんでした。クロダイはコイル状のハリスに違和感・危険を感じたのです。一方で、地面を這う真っ直ぐなハリスは違和感・危険を感じなかったのです。要は、糸が違和感・危険を感じさせるものかどうかが大事なのです。

興味深いのは、「デュエルの魚に見えないピンクフロロ」は太糸の縦糸で魚がぶつかってしまう点です。視覚に頼る日中の状況で特に有効だということが示唆されます。

資料1:魚の行動習性を利用する 釣り入門 科学が明かした「水面下の生態」のすべて(川村軍蔵、ブルーバックス)

資料2:釣りエサのひみつ(長岡寛、つり人社)

URL1:実験は釣り糸が見えると不利になる?(前編)。クロダイは釣り糸が見えているか実証実験!結果は…。と釣り糸が見えると不利になる?(後編)。メジナは糸が見えているか実験!「糸が太いと釣れない」は本当なの?で見ることができます。
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