Q.魚は賢くないから釣り糸が「危険」だという認識がないので気にせず食べるのでは?
A.初めて釣り糸に出会った魚はそうかもしれません。しかし、魚には学習能力があって、糸に対する危険性も察知することができるということが実験で確かめられています。
たとえば、資料2で紹介したクロダイがらせん状の糸を警戒した例や、鯉が底に沈んだハリスに警戒感を解く例は、魚が学習することから起きる現象です。
針に対する危険性の察知の例もあります。北海道大学水産学部清水晋氏らは、サクラマスが釣り針を呑み込んで吐き出すたびに、釣り針つきのエサに食いつくことが次第に減ること、ひいては、釣り針を避けてエサだけを呑み込むようになったことを報告しています(資料1、p146)。
また、「魚の世界にも仕事をサボる奴に「罰」を与える文化があった!」では、大阪公立大学大学院 理学研究科のチームが子育てを手伝う種類の魚が仕事をサボると、両親がその魚に罰を与えることを発見たと報告しています。加えて、罰を受けた魚はその後の手伝い量を増加させて懸命に働き始めることも確認されました。これも魚に学習効果があることを示しています。
加えて、自分で痛い目にあわなくても、群れの仲間が釣られた様子を見て警戒する可能性は十分にあります。理化学研究所と東大の研究グループは傷ついたゼブラフィッシュの皮膚から出て、周りの仲間に危険を知らせる警報物質があることを突き止めました(「みんな危ないよ!」傷ついた魚から仲間への警報物質を発見 理研と東大)。
Q.学習してもすぐに忘れるのでは?
A.学習内容を1年以上覚えている魚がいることが複数の実験で確かめられています。
オランダ海洋研究所のJ.J.ベウメカ氏による実験で、鯉のスレが最長1年継続した報告があります。川村軍蔵氏らの研究ではクロダイのスレが最低でも9ヶ月続いたことが確認されています。千葉県の水産総合研究センターは、オオクチバスのスレが少なくとも1年間継続したことを報告しています(資料1、pp.146-147)。
「見えない糸」があれば、魚が学習の成果を働かせにくくなる可能性はありますね。
資料1:魚の行動習性を利用する 釣り入門 科学が明かした「水面下の生態」のすべて(川村軍蔵、ブルーバックス)
資料2:釣りエサのひみつ(長岡寛、つり人社)
URL1:実験は釣り糸が見えると不利になる?(前編)。クロダイは釣り糸が見えているか実証実験!結果は…。と釣り糸が見えると不利になる?(後編)。メジナは糸が見えているか実験!「糸が太いと釣れない」は本当なの?で見ることができます。
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