堤防からブリなどの青物やヒラメ狙いで活躍する「エレベーター仕掛け」ですが、「エサが潜らないから釣れない」「エサが思ったように潜っていかない」とお悩みのかたが多いのも事実です。
実は、エレベーター仕掛けでは、コツさえ押さえればほとんどの場合、簡単にエサを潜らせることができます。
今回は、筆者が実際に試して効果のあったワザを厳選して紹介します。
【内訳】
・すぐに実践できる「基本ワザ」6選
・少し準備が必要な「応用ワザ」3選
・より根本的な対策「発展ワザ」6選
エサが潜らないことでお悩みのかたはぜひ試してみてください。
基本ワザ1: 道糸は「ナイロンライン」を使う
道糸のおすすめは断然「ナイロンライン」です。
「ナイロンライン」を使うことで、エサの移動を妨げにくくなるので、沖の底までエサを送り込みやすくなります。
ショアジギングなどルアー釣りを主とするかたは「PEライン」の道糸でエレベーター仕掛けを組む人も多いでしょう。もちろん「PEライン」でも釣れるのですが、「ナイロンライン」に比べると相当やりにくくなります。
その理由を紹介します。
「ナイロンライン」のメリットはおもに2つあります。
- 「ナイロンライン」は表面が滑りやすい
- 「ナイロンライン」は水中で張りを保ちやすい
「ナイロンライン」は表面が滑りやすい
「ナイロンライン」の表面はつるつるしていて、滑りが良いです。一方で「PEライン」は「撚り糸」なので糸表面の摩擦抵抗が大きく、仕掛けのスナップの滑りがよくありません。
表面の拡大図を見たら一目瞭然ですね。実際に手に取るとその違いは明白です。
「ナイロンライン」は水中で張りを保ちやすい
「ナイロンライン」は「糸の張り」が適度にあります。また、海水の比重(1.02)より若干高い比重(1.14)のために適度に水に沈みます。そのため、水中で糸の張りを保ちやすく、スナップを滑らせるために必要な「糸の角度」をつけやすいのです。
これに対して「PEライン」は「しなやか」で放置していると糸がたるみやすい糸です。また、「PEライン」は海水より低い比重(0.97)のために糸がたるむと水に浮きます。そのため表層付近で糸の角度が浅くなる状態が起きやすく、抵抗が大きいためエサが潜っていきにくいのです(下図)。
ちなみに「フロロカーボンライン」はどうでしょう。これは「ナイロンライン」と特性は似ていて、エレベーター仕掛けで愛用しているマニアのかたもいます。ただ、糸としては比重が高く(1.78)、「ナイロンライン」より水に沈みやすいです。道糸に使える太糸のフロロカーボン糸は高価で入手性がよくないこともあり、エレベーター仕掛けの道糸としては一般的ではありません。
基本ワザ2: 道糸を張る(適切なオモリの選択)
アタリ待っているときに、道糸をたるませていませんか?
道糸がたるんでいるとそこで仕掛けのスナップがとまりやすくなります。
道糸をピンと張ることで、エサをスムーズに送り込むことが可能となるのです。
ただ、道糸に太糸を使うこの釣り方では、糸の表面積が大きいために風や潮流に流されやすく「糸を張ろうと思っても張れない」ことになりがちです。
そこで大事なのがオモリの選定です。
オモリは以下の2つの観点から選定します。
- オモリの形状
- オモリの重さ
オモリの形状
道糸を十分に張るには、海底にとどまりやすい形状のオモリを選ぶことが大事です。
転がりやすいオモリだと少しの海流や風の影響で踏ん張りがきかず、道糸がたるむ原因となるのです。
釣りのオモリには様々な種類がありますが、エレベーター仕掛けで使われるオモリは「スパイク」か「六角」(小田原)のほぼ2種類です。ごくまれに「ホゴ」オモリを持っておくと便利なときがあります。
おすすめは、「スパイクオモリ」です。「スパイクオモリ」はギザギザのスパイク状の突起によって海底で適度に引っかかり、滑りにくいオモリです。
「スパイクオモリ」の次に海底で滑りにくいのは「六角オモリ」です。面取りしてあるために多少の摩擦力があります。また、シンプルな形状で先方に重心があるので、飛距離を優先させたい場合におすすめです。
海底に引っ掛かりにくくいのは「ホゴオモリ」です。転がりやすいのであまり登場シーンはないのですが、他のオモリではどうしても根掛かりが多発して釣りにならないような場所で活躍します。
オモリの重さは?
オモリの重さとしては通常「25号~30号」を持っておけば間に合うことが多いです。
ただし、流れが激しい場所や強風のときは、35号~50号といったかなり重量級のオモリが必要になってきます。
なお、重量のあるオモリを使う場合は、竿の破損につながることがあるので、事前に竿の「オモリ負荷」を確認してください。
最初の1個は「スパイクオモリ25号」がおすすめ
釣り場によって海底の形状や流れの影響が異なるため、よく使われるオモリが異なります。可能なら釣果情報などでよく使われるオモリを事前に調べるのが確実です。
筆者の住む大阪近郊の波止場では「25号~30号のスパイクオモリ」の使用者が多いです。秋のシーズン中は釣具屋の店頭からなくなるほどです。私は係留力の高い30号をよく使いますが、投げ竿でない限り投げるときに気をつかいますので、最初の1個は「スパイクオモリ25号」がおすすめです。
基本ワザ3: 道糸の「角度」をつける
オモリを投げて道糸を張ったとき、その張り方にもコツがあります。
道糸の「角度」が浅すぎるとエサは潜りにくくなりますので、なるべく道糸の「角度」をつけます。
道糸の「角度」をつけるには以下の4つの方法があります。
- 1)長く硬めの竿を使う
- 2)遠投しすぎない
- 3)高い足場から釣りをする
- 4)竿をなるべく垂直に立てる
ただし、釣り場によっては実践できないこともありますし、実践しないほうがいい場合もあります。
たとえば、遠投が必要なときは遠投を優先させて、エサを潜らせるために他のワザを使うことをおすすめします。
竿をなるべく垂直に立てる
私がよくやる方法を紹介します。
・柵がある場所なら、ダイソーなどの100円均一で購入できる「ソフトワイヤー」を使って竿受けを作り、竿尻を水汲みバケツやバッカンに当てます。こうすることで竿を垂直に近い状態でキープすることが可能です(下図)。
・柵がある場所で、こだわり派におすすめなのは、第一精工の「スーパーパイプ受け太郎」を使う方法です(下図)。
この方法は、竿を高い位置に保持できるので道糸の角度をつけやすいメリットがあります。また、バケツが不要なので複数本の竿を出したい場合にも便利です。さらに、道糸が竿受けに干渉せずダイレクトに海へ出る構造のため、ドラグの性能を発揮しやすく、ライントラブルも減ります。
スーパーパイプ受け太郎のプチカスタム方法
「スーパーパイプ受け太郎」はカスタマイズなしだと垂直状態で「竿+リール」は保持しにくいです。折り畳み部分が竿とリールの重さに耐えきれず畳まれてしまうことがあるのです。ただし、問題なく使えているかたも多く、個体差もあるようです。私はプラスチックパーツを活用して垂れ下がりの防止をしています(下図)。
・柵がない波止場で車止めのある場所では、車止めに取り付けるタイプの竿受け(ナカジマ「万能竿受」)を使ったりもします。竿の角度をつけられるようにビニール被膜の一部を切り取っています。
基本ワザ4: エサの送り出し方
できるだけ海面に糸をつけない
オモリを投げた後、エサのついた仕掛けのスナップを道糸に付けるまでの間も海面に道糸をなるべくつけずに張っておくことは大事です。
ルアー釣りに慣れた人なら特に、ついつい道糸を海面につけたくなるのですが、それだと糸が海中に沈んでしまい、いざエサを送り出そうと道糸を張っても手前からエサがスタートすることになります。
なるべく道糸を沈ませないように意識するだけでかなり効果があります。短時間であれば道糸が海面にとられたとしても、道糸を「空中にはね上げる」ように竿をあおれば、パッと道糸が空中に跳ね上がり、エサのついた仕掛けを沖に送り出すことが可能となります。
スピーディーに仕掛けを取り付けられるよう、オモリ投入前に針にエサをかけておくことも大事です。
強風&混雑のときは使えない
強風だと、たるんだ糸を空中に多く出せば糸が飛ばされます。釣り場が混雑して近くに人がいる場合はライントラブルの原因となるので、別のワザを使ってください。
竿先を高く掲げトントンと竿を叩く
エサを投入した後、エサをなるべく沖に誘導するために竿先を高く掲げ、仕掛けを揺らします。このとき、竿尻や竿のバット部をトントンと叩くのが主流の方法です(下図)。
スナップ部分が振動で沖へ進んでいきますし、振動に驚いたエサも泳いで沖に泳いでいってくれます。
刺激を与えて捕食を誘う
投入時だけではなく、たまにエサに振動を与えて暴れさせ、青物等の食いを誘いたい場合にも使います。
エサを付けた状態で投げる
オモリを投げる前にスナップを道糸に付けて、エサを付けた状態で投げる方法もあります。
エサの泳ぎ出しの位置が沖からになるので、その分エサが潜りやすくなります。
ただし、キャスティング時にエサへの負担が増えるので、他の方法でエサが沈みにくい場合の背に腹は代えられないときに使います。
木玉ウキを付けるカスタム
このワザの難点は、エサの空気抵抗でブレーキがかかり、オモリは沖へいきますがエサは手前へ落ちることです。そんなとき、木玉ウキ等を全遊動で道糸に通してその下に仕掛けのスナップを付けて投げます。スナップ部分の戻りを受け止めてくれるので沖にエサを送りやすくなるのです。道糸を立たせたい人は浮力の高いものを、そうでない人は浮力の低いものを選びます。
基本ワザ5: ハリスを短めにする
ハリスが短いとスタート地点が沖になるので、それだけ沖に送り出しやすいです。
逆に、ハリスが長いと仕掛け投入時にエサが手前で着水してしまいます(下図)。
ハリスが短いと「食いが落ちるのではないか」と心配になりますが、あまり気にする必要はないです。
一般に、泳がせ釣りでは活きエサのパワーで魚の仕掛けへの警戒心がかなり和らぐようです。一方で「フカセ釣り」や「カゴ釣り」ではロングハリスが有効ですが、これは刺し餌と撒き餌の同調が求められるためです。
エレベーター仕掛けの場合、60~80cmの短めのハリスでも食いがあまり変わらないようです。むしろ、短ハリスだとエサが違和感を感じて暴れるためか、食いが良くなることもあるようです。
特に活性が高くヒットが連発するときには短ハリスをぜひ試してみてください。糸絡みが減るメリットもあります。
ハリスの長さのセオリー
活きエサを使う「泳がせ釣り」でのハリスの長さは標準で1ヒロ(1.5m)前後です。セオリーでは、「潮が速い」「活性が低い」ときは活きエサへの負担をなくすために「長めのハリス」、「潮が遅い」「活性が高い」ときは「短めのハリス」を使います。
基本ワザ6: エサを「背掛け」にする
エサの付け方は、「背掛け」にすると特にアジをエサにした場合に潜りやすいとされています。魚は抵抗と逆に泳ぐ性質がありますが、背中側にテンションが掛かることでその逆の海底方向へ泳ぎたくなるのかもしれません。
ちなみに、アジの背掛けのポイントは、第一背びれの前とされています。アジが水平に泳ぎやすく、ハリがアジの血管を避けやすくなります。
以上、「基本ワザ」は今まで通りの「エレベーター仕掛け」で実践できるものばかりです。これで多くの場合効果が見られるはずです。それでもエサが潜らない場合に、次ページでは仕掛けやエサにひと手間加える「応用ワザ」を紹介します。
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